十段最底辺が騒音をまき散らしながら一人暮らしを頑張るブログ

≫おぞましくヤバイもの

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フランSS

スマホ用にw



広く暗い部屋の中、椅子に座る主が従者に問いかける。
光源は一切ないのだが、それでも彼女たちには十分見える暗さである。


「へぇ・・・で、大丈夫そうなの?」
久しぶりに見る従者に主が耳を傾ける。
声が若干はずんでいるのもそのせいだろう。


「おそらく大丈夫だと思います。面倒見はいい方ですし。」
相も変わらず従者はてきぱきと答える。


「まぁ咲夜が言うなら心配ないわね。・・・体験談かしら?」
含んだような言い回し。
彼女の性格が変わっていないことを、従者は懐かしく、そして退屈しないわ・・・と感じた。


「そうともいいますね。」


「ふふ・・・もう少し笑ったら?こういう時ぐらい。」
表情を変えない従者だが、内心はみすかされているらしい。


「一応今も仕事中なので。」


「そうだったわね・・・。まったく・・・。それじゃ彼を呼んでちょうだい。」
残念そうな顔を浮かべた後、元の表情に戻る。
そこには先ほどまでの冗談は見えない。


「わかりました。それではよろしくお願いします。」


「悪いようにはしないわ。確認するだけだもの。」
それを聞くと従者は一度部屋を出る。


「それでは失礼します。・・・にこぇ。」
そして、部屋の外で待つ彼を呼ぶ。


「たぶんなにもされないと思うけど・・・一応なにかあったら声上げてね。」
やはり心配は残るのだろう。そんなことは起きないと彼女が一番分かっているだろうが。


「やっぱ・・・吸血鬼って言うからには緊張するな・・・。」


「小さいからって気を緩めないでね。あれで何百年も・・・」


「咲夜ぁ~まだぁ~?」
笑い交じりのせかす声が部屋から響く。


「それじゃ・・・がんばってね。」


「あぁ。」
ようやく覚悟を決めて部屋へと入る。
中は真っ暗といっていいほどの暗さでなにも見えない。



そしてその闇の中からはっきりとした声。




「ようこそ。紅魔館へ。」







こうして、俺の幻想郷での生活が始まった。






「んじゃ今日は割り算やるか。い・も・う・と・さ・ま。」


「わりざん・・・?かけざんはおわり?」
鉛筆とノートを持ったフランが机に腰掛ける。


「あぁ。掛け算は簡単だっただろう?」


「そうだね~!とっても簡単だった!」
昨日書いたページを指さして無邪気な笑顔がこちらを向いた。
字の綺麗さは褒められたものではないが、字というものを理解したのは十分褒めるに値する。


「いちかけるいちはいち!いちかけるにはに!」
フランが昨日のページを復習がてら読みあげる。


「そうだったな。一個の石を一回だけお皿に乗せると一個。二回だけ載せると二個だったな。」
丁寧に絵まで書いて残してある。
お皿に乗っているのは石なのか、饅頭なのか区別はつかないが。


「そして!にかけるにはよん!さんかけるさんはきゅう!」
手で4や9を指折ってこちらに突き出して見せる。
いまだに二桁以上は数えられないらしく、フランにできるのは3×3が限界なのだ。


「よし、良く出来た!それじゃ今日は割り算を新しく教えるぞ。」
新しいという言葉を聞いてフランの手がしっかりと鉛筆を握る。
これも、握った途端鉛筆が壊れなくなったことを思い返せば大きな進歩だろう。


「わりざん!たしざんとひきざんとかけざんの次!」
楽しそうに新しいページをめくる。
そして鉛筆はノートに向けて、きらきらと目を輝かせてこちらを見ている。


「よし。割り算ってのも簡単だ。スペカに挑んだ数と取られちゃった回数を使うんだ。」


「スペカ?フランは取られたこと無いよ?」


「というか・・・妹様の場合はスペカに入る前に終わっちゃうんだよな・・・。」
スペカに入ってしまっては被害が大きすぎる、とのことを咲夜に言われた。
実際にフランのスペルを見たことはないが、周りの話を疑いたくなるほどの破壊力らしい。


「それじゃパチュリーさまのスペルを使ってみよう。
  霊夢が二回ロイヤルフレアに挑みました。」


「れーむが・・・ろいやるふれあ・・・に・・・2かい・・・。」
ノートにしっかり書きこんだのを見て続ける。


「そして、一回スペカを取って、一回は取れませんでした。」


「一回・・・とって・・・一回・・・取れなかった・・・。」


「よし。それじゃ問題。もう一回霊夢がロイヤルフレアに挑んだらスペカは取れるでしょうか?」
すると、それを聞いたフランの目が丸くなる。


「え?次やったら取れるか?そんなのわからないわ。」


「それじゃ二回挑んで二回とも取れていたら?」


「それなら次もきっと取れるわ。だって全部とれてるんだもの。」


「そうだな。それじゃ二回挑んで二回とも取れてなかったら?」


「それだとたぶん次も取れないと思うわ。」


「よし。それじゃここから新しいところだ。まず引き算で使った『引く』って記号を書いて。」


「あの横の線だよね・・・。かけたよ!」


「そしたら・・・その下にスペカに挑んだ数を書くんだ。」


「今回は・・・2・・・だよね!」


「そうだね。そして上に取れた回数を書く。」


「えっと・・・1でいいの?」


「あぁ。・・・書けたかな?それじゃ、この意味を説明しよう。」
すると俺は腕を組んで得意げに鼻をならす。


「あ!にこぇの『説明もーど』だ!」
なにやら足し算のときに見せたこの格好が面白かったらしく、フランのお気に入りらしい。
引き算の時に「またやって!」と頼まれて以来、ずっとこの調子だ・・・。


「これは『霊夢がロイヤルフレアに挑むと、二回に一回は取れる』という意味だ!」


「れいむがろいやるふれあにいどむと、にかいにいっかいはとれる・・・といういみだ!!」
フランも腕を組んで真似をして言ってくれる。
こうした方が覚えがいいのだから文句は言えない。


「つまり・・・また霊夢が二回ロイヤルフレアに挑んだら、何回とれると思う?」


「さっきやった時は二回に一回取れたから・・・今度も二回に一回だよ!」


「そうなるな。それじゃ、美鈴がご飯を勝手に食べようとして何回やっても咲夜に止められる。
  そして今日もお昼ごはんに手を出そうとしたら止められる?」


「止められる!だって何回やったってできないなら次もできないから!」


「そういうこと。それじゃ・・・パチュリーさまが一昨日も昨日も図書館を出てこなかった。
  それじゃ今日も図書館の中にずっといるかな?」


「ずっといる!だって一回も外に出てないんだから!」


「そういうこと。それじゃ、今日はここで終わり!明日はちょっと難しくなるからな。」
そういうとノートを閉じたフランが鉛筆を置いて外へ出て行こうとする。


そして、部屋の扉を開けようとしたとき、俺の方を向いて
「にこぇ!ありがとう!」
そう残して扉の向こうに行ってしまった。


「ありがとう・・・か。」
そんないつものことに浸りつつ、俺も部屋を出る。


バタン

廊下に出たとたんに声をかけられた。


「あら、もう妹様の勉強は終わったのかしら?」
部屋を出たとたんにパチェと会った。
本を持ち歩いていないところを見ると、今日は忙しくないようだ。


「えぇ。ちゃんと覚えててくれてるみたいで何よりです。」


「そうね・・・あの子がちゃんと勉強するなんてほんと嘘みたいな話よね・・・。」


「あはは・・・あんまり冗談じゃないですよね・・・それ。」


「でも、あなた以外にはできなかったことでしょうね・・・。」


「そうですか?パチュリー様の方が教えるのは上手だと思いますよ?」


「えぇ、教えるだけなら私にでもできるわ。でも、あの子を学ぶ気にさせることはできないわ。」


「そうですかね・・・。たぶん頭の中身が一緒なんでしょう。」
笑いながら冗談を返す。


「そんなこと無いわよ。あの子があなたみたいに冗談言えたら驚くわ。」
パチュリーはいつもの調子で言葉を返す。


「それは面白いですね。妹様が冗談言うようになったら。『夜のお勉強』とか言ったりして。」


「かもしれないわね。」
2人して笑いあう。
最初はすごい魔女と聞いてどんな恐ろしい老婆かと思いきや、普通の女の子で驚いた記憶がある。


思えば、この館の主であるレミリアもフランも幼い女の子ぐらいの身長しかなく、一番身長が高いのは咲夜だった。
そして俺がここに来たせいで一番高いのは俺になった。でも俺の身長も咲夜とそんなに変わらないんだが。


咲夜が幻想郷というところに戻らなきゃいけない、と言い出したときは何かと思った。
なんでも、彼女は幻想郷というところのある館のメイドらしく、こちらの世界には一時的にしか居られないらしい。
そして戻るときに、俺も一緒に来てほしいと言われたのだ。


まぁそんな長いこと彼女と一緒にいたわけではないが、いまさら離れるのも嫌だったのでほいほい着いてきたわけだ。
そのことを彼女はとても喜んでくれたのだが、一つ問題が。


彼女はその館のメイドということで仕事も家もある。だが俺には完全に未知の場所なわけだ。
ちゃんと人間のいる場所はあるというのだが、全く知らない場所で過ごして行ける自信はない。


そこで、彼女がレミリアに頼んで、俺をこの屋敷、紅魔館で雇ってくれないか、という話になったそうだ。
正直、妖怪に魔女、更には吸血鬼までいると聞いて好奇心よりも恐怖が大きかった。
だが、自分でついていくといった以上こうしてなんとか居場所を作ってくれる彼女には、感謝こそすれそれを拒むことはできない。


そして、直にレミリアと会って相談したところ、「妹の面倒を見てくれ」と言われたわけだ。
なんでも、ものすごいわがままな妹らしく、手がつけられないらしい。


てっきり吸血鬼だから「血を吸わせろ」だとか言われるもんだと思ってたから、そんなことかと肩の力が抜けてしまった。
そしてそれを見透かしたレミリアにつけこまれ、いろいろと勝手なことをしゃべってしまった。
後で咲夜に怒られたが・・・。


こうして、俺はなんとか居場所を見つけてここにいる。


最初は全然違う生活に戸惑ったものの、フランやレミリアやパチュリー、そして咲夜に助けられて、今では何の違和感もなく寝床につけるようになった。
まぁ電気やテレビがないのは不便かもしれないが、そんなものに困らないぐらい刺激的な日常に、むしろ不必要なのかもしれないとまで思うようになった。


何より、フランの面倒を見る、というのはなかなかに骨の折れる生活だ。
朝起きてから夜眠るまで、彼女の体は休むということを知らない。
実際、彼女が眠っている間は恐ろしく静かなのだ。
しかし、そんなことを気にする暇もないぐらい俺も疲れてる。


さて・・・今日もフランに勉強を教え終わり、あとは夕飯までなにもなければ寝るだけだ。
外はもう日が落ちかけている。流石に外に出るやつもいないだろう。


夕飯には少し時間があるが眠れるほど時間がないので、美鈴のところへ行ってみる。
彼女はおそらくこの館で一番人間らしい妖怪だ。魔女も妖精も吸血鬼も含めてな。
俺がこの紅魔館に来た頃は、仕事場所の違いがあってほとんど顔を合わせることはなかった。


だが、仕事に慣れてちょっと時間があいたときに声をかけてみるとなかなか面白い奴だった。
向こうは仕事が暇らしく、いつも眠そうにしているから、話している方が仕事になるのだろう。
だが、後でいつも咲夜に叱られているらしい。
門番なんて退屈だろうに・・・。そりゃ眠たくもなるわなぁ・・・。


「よぉ美鈴。今日は起きてるのかい?」
いつも通り声をかけてみる。レミリア達とは違って敬語なんて堅苦しいものは無しだ。
最初に「お・・・おはようございます・・・美鈴さん・・・。」なんて言った時は大笑いされたからな・・・。
こんな屋敷の門番を任される肉体派の妖怪。しかも拳法使いと来たもんだ。誰でも恐れ抱くもんだぜフツー。


「あ、こんばんはにこぇさん。妹様のお勉強は終わりましたか?」
向こうもいつも通りだ。
腰掛け椅子に座って腕を組み、いつでも眠れる状態で座っている。


「あぁ。今日は割り算を少しだけ。あんまり長いと飽きちまうからな。」


「飽きても寝ないのが妹様ですからね。怒って暴れ出したら手がつけられませんから。」
笑いを隠さずに返してくる。


「飽きて寝てくれるなんて考えられない生徒だからな・・・。」


「にこぇさんのいたとこじゃ勉強に飽きると寝ちゃうんでしたっけ?」


「そうだな・・・飽きたとかじゃなく始まった途端寝るやつもいたけどな。俺とか。」


「勉強か・・・私は体を動かす方が好きですね。」
美鈴が椅子から立ち上がり背伸びをして見せる。


「そうだよな。『私勉強大好きです!』なんて言われたらどうしようかと思ったぜ。」
声を高くしてふざけて見せる。
こうした冗談が言えるのは咲夜と彼女とぐらいのものだ。


「あら、じゃあ私の授業でも受けてみますか?退屈させませんよ?」
拳をこちらに突き出したまま、目は笑っている。


「夜誘ってくれるんなら喜んで受けに来るぜ。」


「あら、私は体力ある方ですよ?先にバテないでくださいね。」


「冗談だよ。そんなことしたら咲夜に怒られちまうからな。」
流石にこれ以上はまずいと思い、話を戻す。
こんなところを咲夜に見られたらなんて言われることか・・・。


「私も咲夜さんじゃ分が悪いですからね・・・でも体を動かすのはいいことですよ?」
拳法の動きの一つなのだろうか。
流れるような手足の一つ一つが、見ている者にとって美しいと思わせる何かがある。


「そうだな・・・俺も時間があったら何かやってみるかな。本はたくさんあるんだし。」


「あそこに私たちが読める本はありませんよ。お嬢様ですら読めないんですから。」


「らしいな。全く・・・あれだけの本を全部読むってんだから・・・さすがは魔女だぜ。」


「さすがは七曜の魔女、ってところですね。」


「火をおこして水出して・・・便利なことこの上ないぜ。」


「ほんとですね・・・私もあれだけ魔法が使えたらなぁ・・・。」
何やら目を閉じ、手を前に出して口を動かし始める。
確かにパチュリーの詠唱に似てはいるが、彼女の周りには何も起こらない。


「美鈴が魔法使えたらすごいだろうな。手足も魔法も使えるんだからさ。」


「私の場合、気も合わせて・・・何の魔女なんでしょうね?八曜・・・じゃないですから。」
そのまま目をつぶって考え始める。
俺も、「うーん・・・」と考え込むもののいい答えは思いつかない。


「まぁ美鈴は美鈴だよ。魔法なんか使えなくてもさ。」
結局思いつか無かった俺は、笑いながらなんとか誤魔化そうとする。


「あはは、私も思いつきませんでしたね。」
向こうも目を開けて笑いだす。


「それじゃ・・・俺はそろそろ戻るかな。」
美鈴と話しているうちに日も落ち切ったようだ。
おそらく夕飯の時間も近いだろう。


「ちゃんと夕飯持ってきてくださいよ?私いっつもお腹ペコペコなんですから・・・」
苦しそうに両手をお腹にあて、椅子に座る美鈴。
音こそ出ないものの、美鈴の空腹具合は十分伝わった。


「わかったわかった。ちゃんと咲夜に言っておくよ。それじゃ。」
笑いながらそういうと、俺は手を上げて門をくぐり館の中へと戻る。


「さて・・・厨房に向かうか・・・。」
おそらく咲夜がすでに調理に取り掛かっているだろう。
俺も手伝わなくては。


厨房に付くと、すでに何食かは完成して持って行くだけとなっていた。


「にこぇ。それをお嬢様のところにもっていってくれる?」


「これか・・・それじゃもう一つは妹様か?」


「それはパチュリー様に。今作ってるのが妹様の分よ。」


「今日は図書館にもっていくんじゃないのか。珍しく一緒に『いただきます』か?」
手を合わせる動作をするが、咲夜は目もくれずに調理を続けている。


「何やらお嬢様と話をしていたらしいわ。それでそのまま一緒に。」
ようやく最後の一品が終わったのだろう。
火を止め、フライパンを流し場に置き、できた料理を持ってこちらに来る。


「なるほど・・・それじゃそれ持ってきてくれ。」
両手がふさがっているので、目線で指し示す。


「私はナイフとフォークを持っていくから。さっさと持って行って帰ってきて。」


「了解しました料理長殿。」
語尾を残したまま、食卓へと向かう。


「にこぇー!今日は何~?」
俺に気付いたフランが声をかけてくる。
椅子を揺らして自分の分が来るのを心待ちにしているらしい。


「今日はスパゲッティらしいな。服汚すなよ?」


「大丈夫だよ!フランの服赤いから!」
そういって自分の胸元をつかんで突き出してくる。


「ははっ、ミートソースは落ちにくいからな。咲夜に怒られるぞ?」
そういいながらレミリアのとパチュリーの前にスパゲッティを置く。


「あら。ありがとうにこぇ。」
俺に気付いたレミリアがこちらを向く。
なにやら熱心にパチュリーと喋っていたらしい。


「いえいえ、どうも。 パチュリー様どうぞ。」
そう言って、パチュリーの前にもスパゲッティを置く。


「あら、フランにはあれだけ喋ってたのに。私には冷たいのねにこぇ。」
フランの分のスパゲッティを取りに戻る途中でレミリアに声をかけられる。


「お嬢様。顔は見えませんが笑ってるでしょう?」


「あら、私の顔が笑ってるように見える?パチェ。」


「こういう場合は笑ってるっていうんでしょうね。悲しい顔してるけれど。」
いつもと変わらない口調でパチュリーの回答が帰ってくる。


「お嬢様がパチュリー様とばかり喋ってるからですよ。」
俺はそう言い残して厨房に戻る。


「そうだよ!パチェも久しぶりに一緒にご飯食べるんだからしゃべろうよ!」
それを聞いたフランが身を乗り出す。
先にスパゲッティを持っていかなくて正解だったようだ。さすが咲夜。


「それじゃ、にこぇがちゃんと勉強を教えてるのかテストしましょうか。」


「なんと!?」
いきなりの提案に驚かざるを得ない俺。
確かにフランはちゃんと勉強を覚えているが・・・ノート無しで大丈夫なのか!?


「ちょっと待ってくださいよお嬢様!」
急いでフランの分のスパゲッティを持って厨房から出てくる。


「あら、勉強を教えてる先生がそんなこと言っていいのかしら?」
意地悪そうな笑顔でレミリアが応える。


「大丈夫だよにこぇ!フランいっぱい覚えたもん!」
満面の笑みでフランが返してくる。
この笑顔じゃ反論できないな・・・。


「はぁ・・・わかった。頼んだぞ・・・。」
スパゲッティを置くときにフランの目を見て最後の言葉をかける。
これで間違えでもしたら・・・俺の立場が・・・。


「うふふ・・・それじゃ問題を出しましょうか・・・。」


「お嬢様?パチュリー様の方を向いて言わないでください?」


「あらにこぇ。私はパチェの方を向いただけよ?相談しようとはしてないわ。」
くそっ・・・横目でこっちを向くんじゃねぇ・・・。


「一応断っておきますが・・・妹様は掛け算までしか・・・」


「あら。今日は割り算までやったんじゃなくて?」
しっかり把握されやがる・・・


「そこまでわかってるんならおとなげない問題は出しませんよね。」
俺にはこの程度しかかみつくことができない。


「あら・・・大丈夫よ。勉強の理解度を見るだけだわ。」
とてもそんなこと言って納得できるかおじゃねぇのに・・・。


「・・・わかりました。」
俺も覚悟を決めた方がいいな・・・。


「それじゃ・・・フラン。問題を出すわ。1たす4かける2は?」


「なっ!?」
まずい・・・!掛け算が先ってことはまだ教えていないはず・・・!


「えっと・・・1たす・・・」
フランが口に出して考えだす。
すでに結果が見えたレミリアはフランよりも俺の方を覗き込むように見ている。


「・・・お嬢様の意地悪。」
小声で最後の抵抗を試みる。


「あら。与えられた条件はクリアしたわ。その上での問題だったはずよ?」
レミリアの性格を考えればこうなることは予想できていたのに・・・。


「できたー!」
そんなことは露も知らず、フランが顔を上げる。
すでに目の輝きがとどまることを知らない。


「執行猶予は終わったようね。にこぇ。」
すでに口の端に笑みが見える。


「答えはー!」


「南無三・・・。」
ぼそりとつぶやく。


「きゅうー!」
フランが大声で答えを発表した。


「え?」
お嬢様と素晴らしく息の合ったコメント。
フランの顔を見る限り冗談ではないらしい。


「妹様・・・?」
確かに掛け算から先にやることは教えていないはずだが・・・。


「・・・くっ。正解よ・・・フラン。」


「やったー!できたよにこぇー!」


「あぁ・・・よく出来たな。・・・妹様。」
ようやく、ほっと胸をなでおろす余裕ができた。


「それにしても・・・1+4は5のはずよフラン?」
流石に聞かずには居られなかったのろう。
レミリアがフランの方へ向く。


確かに・・・いつも通りならそっちから先に計算するはず・・・。


「だって5×2じゃ9より大きくてわからないんだもの。」
フランはさも当然のように答える。


「あ・・・なるほどな。」
思わず笑わずにはいられない答えだった。
ついレミリアの前だというのに吹き出してしまう。


「にこぇ?どういうことなの?」
このままでは食いさがれないのだろう。
レミリアがこちらを向きなおす。


「実は・・・妹様は二桁以上の数字が数えられないらしいんですよ。」


「・・・そういうことね。やられたわ・・・。」


「前提条件の不揃いによりもう一問・・・かしら?レミィ?」
意地悪そうにパチュリーが口を挟む。


「問題を出し直す?もう一度やり直すのかしら?」


「やめましょう。早く食べないと夕飯が覚めてしまうわ。」
いつもの顔にレミリアが戻ると同時に咲夜が厨房から出てくる。


「あら、スパゲッティの時間は止めてありますわ。いつでも温かいままですわよ?」
俺の方を見てそんなことを挟む。


「フランおなかすいたー!おゆはんー!」
フランがフォークを取る。
もう一問はなさそうだな・・・良かった・・・。


「それじゃ食べましょうか。いただきます。」
「いただきます。」
「いただきまーす!」


レミリアの号令に2人も合わせる。
ふぅ・・・ようやく夕飯の始まりか・・・。


いつもはフランとレミリアだけでこうも賑やかにはならないんだがな。
まぁたまにはこういうのもアリか。こちらが緊張するのはやめてほしいところだが。







「良かったわね。妹様が間違えなくて。」
食器を洗っているときに咲夜が声をかけてくる。
テーブルを拭き終わって一息ついているらしい。


「まったく・・・あの後もう一問出されたら絶対間違えてたぜ。」
こちらは洗い終わった皿を拭いてしまっているところだ。


「横から口出したのに駄目だったわ。」
壁に軽くもたれる咲夜の声がやたら響く。


「全く・・・そこは口出すとこじゃねーだろう。」
吹き終わった皿を重ねて、棚へと戻す。
妖精メイドでは高さが足りないとのことで咲夜の専門だったらしいが、今は俺に役が移った。


「だってどうなるか見たいじゃない。妹様が間違えちゃった場合。」
主に似て含み笑いは隠さないらしい。


「口を押さえてもわかるぜ・・・全く・・・。」
戸棚を閉め、俺も咲夜の方に向きなおる。


「それじゃ・・・戸締りの確認に行こうかしら・・・。にこぇは?」


「俺は・・・そのまま寝るかな。やることもないし。」


「あら・・・もう館を歩き回ったりしないの?」
咲夜の口の端がまたくっと上がる。


「もうしねーよ。迷子は慣れっこだけど・・・もう一通り見て回ったからな。」
ここに来た当初は子供ながらに見た洋館に胸膨らませたもんだが・・・いかんせん広すぎた・・・。


「そっか。それじゃおやすみなさい。」
そういうと咲夜は厨房から廊下に出て行った。


「さて・・・それじゃ美鈴に飯でも・・・。」
電気を消し終わり、手に自分の分と美鈴の分の食事を持って廊下に出る。
妖精メイドもすでに部屋に戻っているので廊下には誰もいない。


「にこぇ!」
いきなり後ろから声をかけられる。
声の主は見るまでもないが。


「どうした?妹様。」
向き直って返事をする。
何やら手にはいつものノートと鉛筆を持っている。


「さっきのお姉様の問題ってあれで合ってたの?だって1+4は5じゃない。」
勉強熱心な生徒らしいな。教えている身としては非常にうれしいことだ。


「あぁ。あれは掛け算から先に計算するんだ。」


「たとえば1+2+3ってのがあるとして・・・答えはいくつだ?」
フランがノートと鉛筆を手に持ったまま考えだす。


「えっと・・・答えは・・・6!」


「それじゃ最初の二つを入れ替えて2+1+3は?」


「んーと・・・それも6だよね。」


「そうだな。んじゃ1+2×3は?」


「えーっと・・・3×3だから・・・9!」


「・・・一応置いとこう。んじゃ後ろの二つを入れかえて1+3×2は?」


「これは・・・4×2で・・・8!・・・あれ?さっきと答えが違うよ?」
フランが首をかしげる。


「そうだな。掛け算と足し算を一緒に計算するときは掛け算から計算しないと答えが違うんだ。」


「えっと・・・かけざんと・・・たしざんを・・・」
フランが廊下にノートを置いて書き始める。
「ここで書くのは・・・」と思ったが、そんなに書くことでもないので気にせずにおこう。


「ってことは・・・さっきのお姉様の問題はあれで合ってたんだね!」
書き終えたフランが廊下に座ったままこちらを見上げる。


「そうだな。間違えなくてよかったよ・・・間違えたら今頃お嬢様になんと言われるか・・・。」
想像するとちょっと怖い・・・。


「なるほど・・・かけざんからけーさんすればどっちも答えは一緒だね!」
フランがさっきの問題をノートに写して計算している。
いい生徒を持ったもんだ・・・。


「そういうことだな。ちなみに、引き算と掛け算の時も掛け算から計算しないといけないからな。」
ついでにこっちも言っておこう。
明日は引き算と掛け算の問題かもしれないからな・・・。


「ひきざんも・・・かけざんから・・・けーさん・・・っと。」
ちなみに漢字は書けない。
そもそも教えたのが平仮名でよかったのかどうか疑問である。


「書けたー!にこぇありがとー!」
書き終えたフランがノートを閉じて立ち上がる。


「よく出来ました。それじゃ今日も早く寝るんだぞ?」
ご褒美に頭をなでてやる。
お風呂に入った後らしく、少し水気が残っている。


「んじゃ今日も本読んで!」
まだ元気が残っていたようだ・・・。
そろそろ寝る時間だと思ったんだが・・・。


「わかった・・・それじゃフランの部屋に行くか!」
ここで無理に部屋に返すと今度は咲夜が呼ばれるのでおとなしくついていく。
家事全般をそつなくこなす咲夜でも、さすがにフランの世話は遠慮がちらしい。


「今日は何読んでもらおうかな~♪」
すでに絵本選びが始まっているらしい。
実際、彼女の部屋には選ぶのに困らない数の絵本がある。


「あんまり長くないのにしてくれよ・・・?」
夕飯は厨房に置いたままだし・・・。


「大丈夫だよ~。絵本だしね~♪」
おそらく頭の中でいろんな絵が回っていることだろう・・・。







そんなことを考えているうちに彼女の部屋に着いた。
フランが選んだ本を持ってくるまでの間、俺は普段ノートが広がっている机に座っている。
彼女が腰掛けて書き込む机なので腰掛けるにはちょうどいい高さなのだ。


「にこぇ~あったよ~!」
お探しの絵本が見つかったらしい。
本を片手にこちらにパタパタと走ってくる


「どれどれ・・・『いぬさくや』・・・?」
本のタイトルに吹き出しそうになる。
表紙の絵の犬耳が似合いすぎているような・・・。


「咲夜とおんなじ名前なんだよ~♪」
なるほど・・・本をぱらぱらとめくってみるとどうやらこの『いぬさくや』もメイドらしい。


「よし。それじゃ一冊読んだら寝るんだぞ?」
そういいながら俺は、彼女のベッドの横に腰掛ける。


「はーい♪」
そういうとフランは、俺の脚の上に座り込む。
いろいろと恥ずかしいのだが、この位置が一番見やすいらしい。


「それじゃ・・・『いぬさくや』」
タイトルを読みあげる。


「はじまりはじまり~♪」
パチパチと紙芝居のようなフランの拍手が入る。


「『むかしむかしあるところに』・・・








「『・・・でした。』終わり。」
10分ほどして読み終わる。
なかなか絵本らしい絵本だった。


「ありがと~!面白かったね~♪」
フランも満足してくれたらしい。
もう一度本をめくってあのページやこのページを開いては自分で読んでいる。


「それじゃ・・・俺もそろそろ寝るかな。」
あくびをかみ殺して立ち上がる。
まだ眠りには程遠そうなフランが俺の方を向く。


「にこぇは眠いか・・・おやすみにこぇ!」
少し寂しそうだが、一緒に寝るわけにもいかんだろう。


「それじゃ・・・また明日な妹様。おやすみ。」
そう言い残して俺はフランの部屋を出て、自分の部屋へ戻った。






朝9時。
朝日の差さない部屋の中で俺は起きた。


やはり吸血鬼の館というだけあって、ほとんどの部屋に窓は無い。
日が差し込むなんてのは、せいぜい廊下と食堂ぐらいのものだ。


「ふぁ・・・着替えるか・・・。」
あくび一つ残して俺はベッドを出て身支度を整える。


俺の部屋はレミリア達の部屋とはだいぶ離れている。
おかげで周りの部屋は空室だらけで、夜には物音一つしない。


気を使ってくれたのか、気を使われたのかは分からないがあの主のことだからどっちでもないのだろう。
フランの部屋まで毎日5分ほど歩くのはいい運動だしな・・・。


さて・・・それじゃ朝飯でも食ってくるか・・・。
フランの部屋に行く前に厨房に向かう。





「あ・・・。」
厨房を開けた俺の目に入る二つのスパゲッティ。
すでに冷めているだろう事は問題じゃない。問題は『2つ』ということだ。


「美鈴・・・すまん・・・。」
すぐにフライパンで温め直し、両手にスパゲッティを持って門の方へと走っていく。


「美鈴すまん!昨日は悪かった・・・」
手を合わせて謝るが美鈴はこっちを向いてくれない。


「えっと・・・美鈴・・・さん・・・?」
顔色を伺おうにもこちらを向いてくれないのでは判断しようがない。


「・・・・・・さ・・・ん・・・」
ようやく美鈴がしゃべった・・・ようだ・・・?


「なんだって・・・?美鈴?」
よく聞こえず、もう一度聞き返す。


「にこぇさぁん!」
いきなりこちらを向きなおす美鈴。


「うわっ!美鈴!?」
びっくりして一歩後ずさる。


「に・・・こぇ・・・さぁん・・・」
髪で顔が良くわからなくなってしまい、またもや様子をうかがうことに・・・。


「美鈴・・・ご飯持って来たぞ・・・?」
いまさら手に持ったスパゲッティを前に出す。
すると美鈴の顔がこっちを向いた。


「ご・・・ごはぁん!!?!?」
いきなり美鈴がこっちの向かって走り出してきた!


「!?」
声を出す間もなく美鈴の突進を腹で受け止めることに・・・。


「ぐはぁ・・・」
吹っ飛ばされ、そのままばたんきゅー・・・。
しかし倒れる前に御飯だけはしっかりとキャッチする美鈴。


「スパゲッティじゃないですか!しかも美味い!
  さすが咲夜さんこの味加減といい湯で具合といい美味い!」
美鈴のスパゲッティをむさぼる音を聞きながら意識がゆっくりとフェードアウト・・・。


「ぷはぁ~満足満足♪ 量はちと足りませんがそこは質でカバーです!」
食べ終えた美鈴が食器を置いて手を合わせる。
現在俺のアンインストール80%完了・・・。


「っと・・・ご飯があるってことは・・・にこぇさんが持ってきてくれt・・・」
そこで倒れている俺を発見し、急いで駆け寄ってくる美鈴。


「にこぇさん大丈夫ですか!?あの黒いのにやられたんですか!?」
俺を抱きかかえ、情報を聞き出そうとする。


「めい・・・り・・・ん・・・」
現在アンインスト93%でも何かを伝えようとする残り7%の俺。


「にこぇさん・・・」
必死に涙を見せないようにする美鈴。
しかし、涙は重力には逆らえない。ゆっくりとその頬を伝い落ちてくる。


「あぁ・・・もう・・・めいりんの・・・かおも・・・みえな・・・」
ピーッ・・・俺のアンインストール完了。
それを示すように俺の体から力が抜け、美鈴の膝へと倒れ落ちる。


「にこぇさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!」
美鈴の叫びはもう俺には届かない・・・。


「うぅ・・・にこぇさん・・・私を置いていくなんて・・・」


そのとき・・・美鈴の膝に何か動くものが・・・


「にこぇさん!生き返tt・・・」
感動の表情を見せる美鈴の目に飛び込んだにこぇの表情は・・・


「美鈴の・・・太もも・・・(*´Д`)ハァハァ」
天国へ行くことができた至極満足な表情だった。


「ふともも・・・ハァhグハァ!」
天国にも届く美鈴の鉄拳。


「はっ!?ここは・・・紅魔館!?さっきまでのモチモチの枕はどこへ・・・」
いきなり現世に戻される俺。
目の前にはいつもの光景と拳を握りしめる美鈴の姿が。


「それじゃ今度は固い固い砂混じりの枕を・・・」
そのポーズのままゆっくりと近づく美鈴。


「顔が笑ってないぜ美鈴!?冗談だって!」
全力で元に戻ったことを示す俺。
これ以上やると本気で天国行く可能性が・・・。


「にこぇさぁん・・・」
美鈴が口から空気が漏れる音が聞こえそうな形相でなおも近づいてくる。


「ちょっ・・・美鈴マジでやめ・・・」
美鈴の拳が届く範囲になった・・・。






美鈴の拳がかすかに震えたのが俺の最後に見た光景になtt







「なんて変なこと考えないでくださいよ?」
突き出した拳を寸止めした美鈴が笑っている。
一方の俺はゆっくりと目を開け現状を把握する。


「はぁ・・・笑えない冗談だぜ美鈴・・・」
安堵のため息でようやく立ち上がる。
顔に当たった拳圧から突き出していた時を想像すると本当に笑えない・・・。


「まったく・・・それはこっちのセリフですよ・・・本気で心配したんですからね?」
ようやく拳を戻した美鈴が怒ったような表情で返してくる。


「人間と妖怪がどれぐらい違うのかなんて分かんないんですよ。黒いのは私の拳なんか当たりませんし。」
美鈴がちょっとうなだれる。
自分で言っていて少しへこんだらしい。


「なるほどな・・・まぁそこまでヤワじゃないが・・・流石に本気で殴られたら死ぬぜ。」
笑いながら答えるが・・・当たっていたら笑い事じゃ済まなかっただろう・・・。


「そういえば・・・スパゲッティ二つありましたけど一つにこぇさんのでしたか・・・?」
そういえばそんなことを・・・と思わずにはいられないことをおずおずと美鈴が切り出す。


「あぁ・・・そうだったけど大丈夫だろ。今から朝食だし。」
それに昨日はあまり腹も減ってなかったしな。


「そうでしたか・・・ごちそうさまでした・・・。」
深く頭を下げる美鈴。
ご飯に対する礼は厚いようだ。


「ふぅ・・・朝からとんでもない目にあったぜ・・・。」



「こっちだって昨日の夜は空腹で眠れなかったんですからね!?」
目で訴える美鈴。
あの突進を見れば冗談には聞こえない・・・。


「あはは・・・悪かった・・・。昨日は妹様のとこ行ってそのまま寝ちゃってさ・・・」


「妹様と寝た!?にこぇさん!?」
何か変にとらえる美鈴。
体全てを使って驚きを表している。


「あぁ、違う違う。部屋出て自分の部屋に戻って寝たんだ」
言ったことに気づいて言い直す。
そんなことしたら咲夜に・・・これ以上想像したくないぜ・・・。


「ですよね・・・お嬢様が何と言う事か・・・」
そういえばレミリアの妹だったな。
精神年齢にものすごい差はあるが。


「ここを追い出される・・・で済めばいいんだがな・・・」
妹を寝取られたとなれば・・・それこそ息の根を止めるどころではないだろう・・・。


「あはは・・・あんまり想像したくないですね・・・」
向こうも同じような事を考えたのだろう・・・。


「ふぅ・・・それじゃ俺も飯食いに行ってくるかな・・・。」
ようやく腹が減ってきたようだ。
それにそろそろ妹様も起きるだろう。


「そうですね・・・それじゃお互いお仕事がんばりますか!」
美鈴が気合いを入れ直す。
お仕事か・・・ほんとに仕事なんだろうな・・・?


「そうだな。それじゃまたあとでな」
彼女に昼食は無いので次は夕方あたりになるだろう。


「いってらっしゃいませ~♪」
門をくぐる俺に美鈴が一言かける。


「簡単に通すなよ・・・門番だろう・・・?」
まぁ止められたら俺じゃ通れないんだが。


「言ってみただけですよ。普通は言えませんし。」
確かに門の外に出るなんて誰もしないしな・・・。
せいぜい咲夜が買い出しに出るぐらいのものか。今は俺が買い出しだが。


「はは・・・それじゃいってくるぜ。」
それっぽく返して屋敷に戻る。
さて・・・飯食って妹様のとこに行くか・・・。







手みじかに朝食を済ませた俺は妹様の部屋を目指して食後の運動程度に走る。
美鈴みたいにいきなり突進されたら朝食をまた見る羽目になりそうだ・・・。


「妹様ぁ~起きてるか~?」
部屋の前に付き、ノックしながら扉越しに呼び掛ける。


「にこぇー!起きてるよー!」
扉越しでもよく聞こえる声が返ってくる。
昨日はちゃんと寝たようだ。起きていたら今も寝ているだろうし。


「んじゃ顔洗ってきな~、たぶん咲夜が朝食作ってるから~。」
吸血鬼といえどちゃんと朝飯は食べるらしい。
咲夜が時間を間違えるわけがないのでおそらくもう取りかかっている時間だろう。


「はーい!」
中でパタパタと走る音がする。
五分ほどしてフランが部屋の外に出てきた。


「今日の朝食なんだろうね~?」
もうすっかり眠気は覚めたらしい。
いつもの調子でフランがしゃべりかけてくる。


「いつものトーストかもな。朝から腹にたまるもんは出ないだろうぜ。」
まぁ咲夜のことだし何作っても美味いんだろうが・・・。


「楽しみだよねー!咲夜の朝ご飯ー!」
この反応を見る限りやはりトーストは美味いのだろう・・・
トーストを美味く作るってのは・・・さすが咲夜。


そんなことをしゃべりながら食卓へ。
すでにレミリアが自分の席に座っていた。


「あらおはようにこぇ。ちゃんと生きてるじゃない。」
こちらを見て笑うお嬢様。
あれ絶対嬉しい笑いじゃないって・・・


「えぇ・・・美鈴にちょっと三途の河を見せられてきまして・・・。」
どうやら彼女にこの館付近で起こることは筒抜けらしい。
一回寝坊してギリギリ間に合わせたのにバレたことあったからなぁ・・・。


「まぁあれぐらいで死んでもらっても困るけど・・・ねぇ咲夜?」
厨房の咲夜に聞こえるか聞こえないかぐらいの声量で尋ねる。


「もうちょっとでできるので"静かに"待ってて下さいね、お嬢様。」
静かにを強調した咲夜の声が帰ってくる。
それを聞いて満足したのかレミリアがくすりと笑う。


ちょっとしてトーストの載った皿を両手に咲夜が食卓へ出て来た。


右手の皿をレミリアの前に置く。


そしてフランの方へ向う途中で俺と目があった。
その瞬間、何かにつまずいたのか、皿が傾きトーストが皿から落ちる。


「さくy・・・」
俺が言うのが速いか、咲夜はきちんとトーストの真下に皿を構え直していた。
そして何もなかったかのようにその上にトーストが落ちる。


(便利だよなぁ・・・時を操るなんてさぁ・・・)
そんなことを昔咲夜に言ったら案外そうでもないらしい。
まぁこのあたりは本人にしか分からない何かがあるのだろう。


「どうぞ、妹様。」
「ありがと咲夜ー!」
今日もいつもどおりの朝食が始まる。






「どうかしたのか、咲夜。」
フランがトイレに行っている間に、皿洗いをしている咲夜にさっきのことを聞いてみた。


「どうかしたって・・・何が?」
咲夜は隠す風でもなく自然に聞き返す。


「だから・・・さっきのトースト落としたことだよ。
  今まで一度もなかったじゃねーか、あんなこと。」
あといつもならよろけた瞬間に時が止まるはずだ。
トーストを落とす前に。


「あぁ・・・別に何でもないわ。考え事をしてただけよ。」
洗い物をきちんとこなしながら咲夜が返事をする


「考え事か・・・今日の昼飯とかか?」
ふざけて茶化してみるもやはりこちらを向かずに皿洗い。
まぁこれも仕事の一つだし仕方ないか・・・。


「にこぇー!トイレ終わったよー!」
フランがトイレから出てきた。
自分の部屋にもトイレはあるのに、起きた直後ではなく食後に行くのが日課らしい。


「おぅ。んじゃまたあとでな、咲夜。」
洗い終わった皿を棚に戻している咲夜に一声かけてフランと一緒に廊下に出る。
なにか機嫌悪そうだったが・・・いつもと変わらないから何とも言えない・・・。





朝食の後は昼食までお遊戯の時間らしい。
まぁお遊戯といってもフランと一緒に遊ぶだけなので大袈裟なことこの上ないのだが。


「さて・・・今日は何やろうか、妹様?」
彼女の遊びのレパートリーは館の外に出れないためそんなに豊富ではない。
しかし、いつも違う結果になるので退屈はしない。


「ん~・・・今日は・・・」
目を閉じて頭を使っているフラン。
このあたりはとても500年近く生きてるとは思えない子供らしさだ。


「今日は・・・お屋敷たんけん!」
ぱっと顔が明るくなるフラン。
まぁこの時間はだいたいこの遊びなんだが・・・。


「よし・・・んじゃどこ回る?こないだは図書館に言ったから今日は別のとこな。」
そういうとフランがまた頭を悩ませる。


前回、図書館に行ったのはいいが・・・
扉を開けるや否やパチェに「妹様を中に入れないで」と言われたときはどうしようかと・・・。
そのあと、なんとか交渉して横の空室で本を眺めるだけにするということに落ち着いた。
本当に何が書いてあるのかわからなかったが・・・。


「ん~・・・今日は・・・おねぇ様の部屋に行こう!」
フランが手を上げて目的地を発表する。
よく何百年もいてそれだけ楽しめるなぁ・・・俺なんか地元はもう飽きてたぜ?


「お嬢様の部屋か・・・
  そういえばここに来たときの一回しか行ったこと無いな・・・。」
普段足を運ばない場所ということもあって前を通ることすらないのだ。
テラスで咲夜と紅茶を飲んでいるのは見かけるが、部屋の中で見たのは一回だけである。


「それじゃ・・・しゅっぱつしんこぉー!」
フランが俺の手を引っ張ってレミリアの部屋へ向かう。


目的地に着くまでにも適当に部屋のドアを開けてみたり、出会った妖精メイドと喋ったり、フランといろいろしゃべるので退屈はしない。

そうして館の一階の端まで着いた。
この階段を上がってすぐ隣がレミリアの部屋だったはずだ。


「もうすぐしゅうてんですよ~♪」
バスガイドの真似をするフラン。
幻想郷にバスなんてあったかな・・・?


そのとき、上に上がる階段の隣に下に降りる階段を見つけた。


(この館地下まであるのか・・・ずいぶんと広いんだな・・・)
ちょっと覗いてみたが薄暗くてよく見えない。
日の差さないこの屋敷内で更に地下とあっては真っ暗だろう・・・。


「にこぇー!しゅうてんだよー!」
すでに二階に上がったフランが呼びかける。


「・・・あぁ。今行くよ。」
後で行ってみるか・・・今はフランについていかねば・・・。


「にこぇおそいよ!もうついちゃったよ!」
扉の前でフランがすねている。


フランの後ろにはおそらくレミリアの部屋のものと思われる扉があった。
見た目は他のものと変わらない扉だが、雰囲気の違いは俺でも感じ取れるものだった。


「それでは・・・おっじゃまっしまぁ~す!」
ノックなんて言葉を知らないであろう彼女は精一杯の誠意を払ってドアを開けた。
扉を壊さないことが彼女なりの礼儀なのだ。たぶん。


「おじゃまします・・・。」
部屋の中は一度目よりはずいぶん明るかったものの、それでも日の入りは少なく薄暗かった。


その部屋の主は、いつもよりは一枚薄着で読書中だったらしい。
まぁこんな館の一部屋だ。誰か来るなんて思わないだろう。


「あら・・・いらっしゃいフラン。今日は何を壊しに来たのかしら?」
本よりも面白いものを見つけたレミリアがゆっくりとこちらに目を向ける。


「こわしにきたんじゃないよ!あそびにきたんだよ!」
いつもと変わらないフラン。
一方俺は目を向けられただけで冷や汗が出かかっている。


「あら・・・あなたの遊びに無事ですむものがあるのかしら?」


「フランが壊すんじゃないよ!むこうがかってに壊れちゃうんだよ!」
流石は我らがフラン先生。顧みる心など微塵もない。


「うふふ・・・そうね。それに今日はちゃんとお目付け役がいるものね・・・。」
そういって目線を俺一人に絞るお嬢様。
冷や汗が限界まで耐えきり、つーっと流れ落ちるのが分かった。


「妹様。いますぐこの部屋から出ましょう。俺の命が危ない。」
この場合お目付けというよりは身代わりの方が合っているのだろう・・・。
確かに物が少なそうな部屋だが・・・それだけに一つでも壊したら・・・。


「それじゃ好きになさいフラン。」
さぁギロチンが真っ逆さまに俺向けて落ちてくる。
はたして途中で止まるという奇跡は起きるのだろうか・・・


「妹様・・・俺の命・・・まかせましたよ・・・」
レミリアのあの顔を見る限り前言撤回は無い・・・。
あぁ・・・奇跡よ起きてくれ・・・。


「それじゃえんりょなく~♪」
それを聞いて満足した妹様。
常に遠慮しない彼女がさらに遠慮しないなんて・・・


「さて・・・どうなるかしらねぇ・・・にこぇ?」


「・・・こっちには祈れる神さまとかいないんですか?」


「いるわよ?私の知り合いだけど。」


「吸血鬼と顔見知りの神さまですか・・・」


「それに死ななくたって会えるわよ。喜ぶわよ?『信仰が増えたー!』って」


「・・・現金な神様ですねぇ・・・」


「現金に飢える巫女が守る世界ですもの。神様なんてそんなものよ。」


あぁ・・・祈る神がいることすら感謝すべきだったのか・・・




そんなことをしゃべってるうちにフランの"御遊び"は一通り終わったらしい。


そして最後の大きなクローゼットを全開にしたまま中をゴソゴソと散らかしている。


「・・・ずいぶん服がたくさんありますね・・・」
所せましとまではいかないが大きなクローゼットを十分埋め尽くすだけの服が掛けてある。


「あれだけあっても全部着ないけれどね・・・」


「ですよね・・・みたこと無い服がたくさんありますよ・・・。」
やはりお嬢様というだけあってそれらしいドレスが多い。
・・・目を疑うような布の薄いものも見え隠れしているのだが。


「それに咲夜が洗ってくれるから毎日同じ服でもなんとかなるわ。」


「あぁ・・・確かに・・・。」
それにこの館・・・なぜか雨が降らないらしいからな・・・




すると突然フランが声を上げた。
「おねぇさまー!この箱なぁに~?」


フランが持ちあげたのは救急箱より少し大きいぐらいの木箱だった。
随分古いものなのだろうか・・・ずいぶんふr




「フラン。今すぐその箱を元の場所に戻しなさい。」
レミリアが静かに、しかし鋭い一言をフランに"命令"した。
さっきまではふざけた調子だった彼女が今は見ることもできないほどに恐ろしく感じる。


「えー!?好きにしていいっていったじゃ~ん!」
こんなこと言っても無駄だとは思うが空気を読め妹様!
ここはふざけていいとこじゃない!


「いいからその箱を置きなさい。次は無いわよ?」
すでに凍っていた空気がもはや息もつかせぬほど張り詰めていく・・・。
しかしフランの口元からは笑みが消えない。


「お嬢様が言ったんだもの~♪好きにしていいって!」
いよいよ箱を地面に置いて開けようとするフラン。


「はぁ・・・残念ね。今度は1000年ぐらいかしら?」


その言葉を聞く前に俺はフランのもとに走りだしていた。
1000年ってのがどういう意味なのかわかんないけどフランを止めないとまずいってことだけはわかった。


「いっ、妹様!今日のところは帰りましょう!」
箱に掛けかけた手を止めて箱を奪い取る。


そしてフランが驚いている間に箱をクローゼットの中に戻し、全開だった扉を閉めた。


「あー!にこぇがとったー!」


「わるいわるい!・・・それじゃお嬢様!今日はこの辺で!」
俺が逃げるように部屋を出ると怒りがおさまらないフランも俺の後をついて出てきた。


「にこぇまてぇー!」
フランの声が遠ざかるのを確認して、レミリアはクローゼットを開けて中を確認する。


「人間・・・か・・・。」
箱が元の位置に置いてあるのを確認し、静かにレミリアはクローゼットを閉じた。




結局、俺はレミリアの部屋を出た後、いつもの一階の食堂あたりまで逃げてきた。
もちろん、フランも一緒についてきている。というか追いかけてきている。


「どうどう・・・廊下は走っちゃいけないぜフラン?」
いい加減走るのに疲れた俺は立ち止まって呼吸を整えながら、フランの方を向きなおす。


「走ってたのはにこぇ!フランはちゃんと飛んでたもん!」
そういって"着地"するフラン。
家の中を飛ぶってのもなぁ・・・その発想はなかった。


「っていうかなんで邪魔したの!?あの箱面白そうだったのに!」
いまだ興奮収まらぬフランが食ってかかる。
よほどあの箱に期待していたらしい。


「仕方ないだろう・・・お嬢様の怒り具合が普通じゃなかったんだから・・・」
あのまま箱に何か起きたら俺の身だけじゃすまなそうな空気だったし・・・。


「だってお姉様いってたもん!好きにしていいって言ってたもん!」


「まぁ、そうは言ってたけどそれでもやっちゃいけないってことはあるさ。」
このあたりはちゃんと言っておいた方がいいだろうと判断し、俺は真面目にお目付け役を果たすことにした。


「だって!お姉様が自分で言ったのよ!?」
まだまだ引き下がらない様だ・・・。


「それじゃフランは自分の言ったことが間違ってても絶対に言いなおさない?」


「私は大丈夫だもん!間違ったことなんて言わないよ!」


「ほんとにぃ?大丈夫かなぁ・・・?」


「大丈夫!ほんとに大丈夫!」
くそぅ・・・なかなか引き下がらないな・・・。


「でも、フランがそうでもお嬢様には言いなおしたい時があるのかもしれないぞ?
  さっきみたいにな。」


「それは・・・でも一回言ったことだもん!」


「まぁそう言う事もできるが、他の人だってそういうことがあると思うぞ?
  咲夜が「今日の夕飯はハンバーグです。」っていって野菜ばっかりだとかな。」


「咲夜はそんなことしないよ!」
くそ・・・痛いとこついてきやがる・・・。


「でも俺ならあるぞ?朝寝過してフランのとこに行くのが遅れるとかさ。」
いまのとこそんなことになってない自分を褒めたい気もするが・・・


「うー・・・」
寝坊しかねないダメ人間の俺には反論できないらしい。
ようやく折れてくれたようだ・・・。


「まぁお嬢様だっていつもあんなこと言わないだろう?
  たまにはああいうのも許してやれよ、な?」


そういってフランの頭をなでようとした手が空を切る。


少しバランスを崩す俺を残してフランが走り去るのが見えた。
こちらも見ずに一目散に立ち去ってしまったらしい。


「ちょ・・・フラン!?」
何か変なことでも言ってしまったのかと慌てて追いかける。


自分の部屋に戻るのかと思いきや、彼女は館のホールから外に出て、美鈴のいる門とは違う庭の方に走って行った。


「なんで・・・庭なん・・・かに・・・」
フランの全力疾走は思った以上に早く息も絶え絶えに追いかける。


庭に着いたフランがようやく足を止める。
それをみて俺も脚を止め肩で息をしながら口を開く。


「どうしたんだよ・・・フラン・・・急に走りだしたりして・・・」
しかしフランはこちらを向きもしなければ口も開かない。


「はぁ・・・俺がなんか変なことでも言ったか・・・?」
ようやく息を整え、フランの方を向きなおす。


するとフランがぼそりと


「・・・言ったよ。」


はっきりとは聞こえないような声で返事をした。


「変なことって何だよ。許してやれって言ったことか?」
いまいちフランが何に怒っているのかわからず聞き返すといきなりフランがこちらを振り向いた。


「なんで許してやらなきゃならないの!?許すのはお姉様の方よ!
  私が謝ることなんて無いわ!お姉様が謝るべきよ!」
泣いていたのか目を真っ赤にしてフランが叫ぶ。


「まぁ落ちつけってフラン・・・別に俺はお前が悪いって言ってるわけじゃ・・・」

いまいちフランの言っていることが分からないが、自分が正しいのに聞いてもらえなかったのがそんなに悔しいのかと思った俺のこの一言が悪かったらしい。


それを聞いたフランが一気にまくしたてるように口を開く。

「じゃあ何よ!お姉様が悪いの!?そんな風に言ってなかったじゃない!
  いつも悪いのはフラン!お姉様は正しい!
  私の話は聞いてくれないでいつもお姉様お姉様!
  そんなにフランが悪いの!?ねぇ!フランはいつも悪い子なの!?」


「だから落ちつけって・・・別にそういってないだろ・・・?」


「だってそうじゃない!フランは間違ってないよ!間違ってるのはお姉様の方よ!
  なのにフランが悪い子にされてお姉様は何も言わずに澄まし顔!
  そんなのっておかしいじゃない!おかしいわよ!」


「あのなぁ・・・フランが悪いって言ってるわけじゃ・・・」


「もういい!にこぇなんて嫌いよ!ダイッキライ!死んじゃえ!
  『禁忌「レーヴァテイン」』!!」


言い終わるや否や、直視できない光がフランの右手から放たれるとその光は大きな剣に集約された。
いきなり現れた剣に驚く俺を無視して、フランが真っ赤に輝く剣をゆっくりと振り上げる。


それを見て俺にも、緊迫した今の状況が一瞬で理解できた。


「おいフラン!何してんだ!」



「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
俺の声など聞かず、フランが叫び声と共に一気に剣を振り下ろす。


「俺にそんなもん振り下ろしたって何にもならないだろフラン!」


「うるさい!にこぇなんて・・・そんなこと言うんならにこぇなんていらない!」


結局振り下ろされる剣の勢いはますます強くなる。


(あぁ・・・俺にフランの目付け役は重荷だったのか・・・)
そんなことを思っている間にも、フランの剣がゆっくりと迫ってくる。

確実に死が迫りくる中、思い出されるのはここに来る前のことよりもここに来てからの記憶だった。

いろんな光景が頭をよぎりながら、やはりフランと一緒にいたのが一番多かったのだろう。

そういえばここに来てから来る前ほど咲夜と喋る機会が減ったなぁ・・・。
今日だって怒っているように機嫌が悪かったし・・・あとで一応謝っておこう・・・。


あ・・・でも『あとで』って・・・次もう会えねぇのか・・・。




ゆっくりと今までを振り返るも、確実に進む時間が剣を推し進めていく。


どうやら俺の声は、結局届かなかったらしい。



「あぁ・・・まだ行ってない部屋とかあったのになぁ・・・。
  妖精メイドに混じってパチェの後をついていったり・・・。
  夕飯にケチャップ掛け過ぎて口の周りを真っ赤にしてたり・・・。
  一緒に本を読んだり、授業の真似したり・・・もうできねぇのか・・・。」


自分の数瞬先をあまり思わないようにして剣に身を任せるように全身の力を抜く。
一瞬、わずかに剣が遅れた気がしたがおそらく気のせいだろう。


「あと・・・咲夜に一言謝っておきたかったなぁ・・・」


そんなことを口に出してみると、視界の端に咲夜が見えたような気がした。




あぁ・・・咲夜・・・お前なんでそんな顔して・・・











そこで俺の意識は轟音と共に途絶えた。













「ここを・・・して・・・いけ・・・はず・・・」


「ん・・・」
聞いたことのない声を聞いて俺は目をさまs


「ごめん!もう少し寝てて!」



ヒュッ・・・





バキッ!


「ぐへぁ・・・」
喉元に強い衝撃を受け俺は再び深い闇の中へ・・・









「潜るかッ!あんなネタ二度もやらせてたまるかゴルァ!」
流石に二度も同じネタを体張ってやるわけにもいかないので無理やり生還。


すると周りには咲夜とレミリアと・・・見たことのない生き物が一匹。
何やら大きなバッグにたくさんの機械をしまいこんでいるようだ。


「あら・・・ずいぶん元気そうじゃないにこぇ。あなた丸二日寝てたのよ?」
日の差しこむ部屋で一番遠くに座っている彼女が口を開いた。


「二日・・・?丸二日も・・・?」
左手をつき体を起こしてみると、確かに寝すぎたようなだるさが全身に感じられた。


「まぁ少しは休んでいてもいいわ。そこの河童に礼を言ってね。」
そう言い残して、レミリアは部屋を出て行った。


部屋のドアが閉まると、河童が一息ついて口を開いた。


「あー・・・ようやく出て行ってくれました・・・」
ベッドのそばにある椅子に腰かけて、砕けた口調で河童が喋り出す。


「いきなり呼び付けてしまったにも関わらずいろいろとありがとうございました。
  ずいぶん長くなってしまいすみません。」
ベッドを挟んで反対に立っていた咲夜が深々と頭を下げた。


「いいですよ~♪ こっちから頼みたいようなことでしたしね。」
そういうと、彼女はとても楽しそうな顔を見せる。


「作ったものの、試す機会がなくて困ってたんですよ・・・。
  まぁ性能の方は大丈夫ですので。」


「そうですか・・・。まぁ本人もおかしいと思ってないみたいですしね。」
すると河童が俺の顔をじっと見てくる。


「え・・・どうかした・・・か・・・?」


俺の顔を覗き込んで顔色を伺うと


「そうですね・・・まぁ何かあったらまた来ますので。」
顔を離して、部屋を出ようとする河童。


「あ・・・よくわかんないけどありがとうございます・・・。
  えっと・・・名前は・・・?」
最後にそれだけ聞こうと声をかける。


「あ・・・河城にとりっす。
  妖怪の山の川のほとりでいろいろやってるのでお暇でしたらきてくださいな。」
そう言い残してにとりは部屋を出て行った。


「なぁ咲夜・・・彼女は何をしにきたんだ?」
直接聞けなかった一番の疑問を早速投げかけてみる。


「あなた・・・倒れる前のこと覚えてる?」


「倒れる前・・・たしかフランがでっかい剣みたいなのを・・・」
いまさらながら、なぜ生きているのかに混乱する状況だった・・・。


「それを見つけた私が時間を止めてギリギリ命だけは助けられたの。
  右腕は吹っ飛んだけどね。」
さらりと凄いことを告げられた。


「右腕吹っ飛んだ・・・?あの後・・・?」
何事もなかったかのような今の空気に全く実感がわかない。


「肩からごっそり持ってかれてたかしらねぇ・・・。
  それを彼女に直してもらったのよ。」


「治してもらったのか・・・。」
言われて自分の腕を改めてみてみると肩の付け根あたりに接ぎ目のようなものがあった。


「あぁ・・・違うわ。"治した"んじゃなくて"直した"の。」
そういうと同時に咲夜が俺の右肘の方に触れた。


すると急に右手の指が空中に向かって動き出した。


「え・・・なんだこれ・・・?」
力を入れてないはずなのにものすごい速さで動く自分の指を不思議そうに眺める。


そして右手の指が動きを止めると、空中には魔方陣が描かれていた。


「簡単な防衛魔法らしいわ。河童さんがいろいろ仕込んでくれたらしいの。」
説明が終わると同時に、空中の魔法陣も消えていった。


「凄いなこの腕・・・他にもいろいろあるのか?」
咲夜が押したあたりをいろいろ触ってみるが、他にそれらしい感触はなかった。


「今は他に何もないらしいけど・・・にとりに頼めば他にもつけてくれるんじゃない?」
どこかあきれたような口調で咲夜が返した。


「そーいやこの腕って取れたりするのか?」
一通り触っていると付け根の部分でそんな疑問が頭をよぎった。


「下手に取れちゃってまたつけられなくなるのは困るんじゃない?」


「・・・あまり触るなってことな・・・」




「そーいえば俺はここで無事っぽいが・・・フランはどうなったんだ?」
やはり右腕は吹っ飛んだらしいからな。
いまだに実感がわかないけれども。


「妹様はまた地下に幽閉。あの後すぐにね。」
ため息交じりの咲夜が報告してくれる。


「地下に幽閉・・・?それに"また"ってなんだ?」


「数年前までお嬢様に幽閉されていたらしいわ。495年ほど。」


「495年!?ずっとか!?」


「私がここに来て少し経った頃に、出してもらえていたけれど・・・。
  それまではずっと地下だったんじゃないかしら?」


「そんなことが・・・。それで今はまたそこに閉じ込められたのか・・・」


「あなたのことも含めて好き勝手暴れたかららしいわ。」


「・・・含めてか。」
そのあたりはレミリアらしい、と勝手に思った。


そこで少し間があいた。
すると咲夜が席を立って部屋のドアへと向かった。


「それで・・・この後どうする?何か食べる?」


「ん・・・今はいいや。
  それより・・・フランに会えるのか?」
それを聞いて、咲夜が二度目のため息をつく。


「やっぱりそういうことになるのね・・・。
  地下に下りる階段はわかる?」


「向こうの下る階段だよな?」
フランと一緒に見つけたのがさっきのようだが実際は二日前なんだよな・・・。


「そう、その階段を下りた先にあるわ。
  行けば分かるはずよ。」
そういって咲夜がドアノブに手をかける。


「・・・行ってどうするの?」
こちらに背を向けたままで咲夜の声が部屋に響く。


「・・・咲夜?」


「・・・あの子はいつもそうなのよ。遊ぶおもちゃを無傷で片づけられない子なの。
  そして傷つけたことに一番傷ついてるのはあの子自身なのよ。」


「それがわかってるから誰もあの子と深く関わろうとしないの。
  あの子が寂しがろうと悲しむよりはいいはずなのよ。」


「・・・そう言い聞かせて納得できてるのか?」


「それも私の仕事なの。私はお嬢様の従者。
  あの子を傷つけることをお嬢様が望まない限り、私はあの子とは関わらない。」


「そうか・・・わかったよ。」


「・・・それじゃ行ってらっしゃい。」
そう言って咲夜がドアノブをひねった。


「あぁ・・・。」


「・・・あの子を・・・お願いね。」

そう言い残して咲夜が部屋を出た。






咲夜が部屋を出た後、一人残された俺はぼんやりと窓から外を眺めていた。


地下に長い間幽閉されていた。
それは、経験した者にしか分からないどんな言葉にしても表せない何かがあるのだろう。


日の差さない狭く真っ暗な部屋の中でただひたすら起きては寝ることを繰り返す。
それは生き物としてこれ以上ない退屈を伴う生活である。


彼女にはこんな晴れた空やそれを覆う雲、降り注ぐ雨やそれを受け止める地面さえ見ることはない。
もはや目を開けても閉じても同じ暗闇しかないその世界では生きるという言葉さえ意味を成さない。


きっと彼女はそのまま時間が止まっていたのだろう。
食事をとっても、意識があっても、心臓が動いていたとしても。


彼女が彼女自身を『生きていた』、と語ることはないと俺は勝手に考えた。


ひょっとすると彼女が子供のままの性格なのは、そうでなければ耐えられなかったんじゃないか・・・。
いや・・・流石に考え過ぎか・・・。


これ以上考えてもどうせ答えのようなものは出ない。


顔を上げ、ベッドから起き上がる。
二日ぶりに踏みしめた足元の確かさまでが彼女には無いのかと思ってしまいながら部屋を出た。






フランの後を追って見つけた地下への階段。
記憶の中では数時間前でも、実際には二日前なんだよな・・・と思いつつ階段を下りる。


階段の途中に明かりはなく、降り切った先に火が灯っていた。
そこからうっすらとフランがいるであろう部屋のドアが見えた。
ドアにはおそらく食事を差し入れるための郵便受けのようなものしか付いておらず、のぞき窓などは付いていなかった。


「・・・フラン?」


「ッ・・・。」
呼びかけてみると息をのむような音がした。


「フラン・・・俺だ。わかるか?」


「・・・なんで来たの?」


「おいおい・・・ずいぶんな返事じゃ・・・」
「なんで来たのって聞いてるのッ!来ないでよ!」


ドアがかすかに揺れたような気がした。


「・・・何をそんなに怒ってるんだ?」


「・・・もう喋ってこないで・・・」


「本当にそう思ってるのか・・・?」


「・・・・・・・・・。」


「なぁフラン・・・。そこから何が見えるんだ・・・?」


「・・・何も見えないよ・・・。真っ暗だよ・・・。」


「そうか・・・ちゃんと眠れるのか?」


「・・・一応ベッドがあるから。」


「食事は咲夜が持ってきてくれてるのか?」


「朝と夜だけ。動かないからあまりおなか減ったりしないんだけどね。」


「咲夜とは喋るのか?」


「咲夜は喋るけど私は喋らない。喋ることなんてない。」


「そんなことないさ。『美味しかった!』とか『量が少ない!』とかあるだろう?」


「・・・・・・。」




「なぁフラン・・・レミリアは嫌いか?」


「・・・なんであいつの名前が出てくるの?」


「咲夜から聞いたよ。昔ずっとここに閉じ込められてたことをさ。」


「・・・・・・・・・。」


「レミリアが憎いか?自分をここに閉じ込めた・・・」


「だからなんであいつの名前が・・・ッ!」




「なぁフラン・・・今でもレミリアに恨みとかあるのか?」


「そんなものないよ。だってなんでこんなとこに閉じ込められたのかわからないんだもの。」


「・・・そうなのか?」


「だって私はお姉様と一緒にぬいぐるみで遊んでただけなのよ?」


「それで・・・そのぬいぐるみは?」


「・・・わからないの。気づいたらボロボロになって・・・。
  そのあとすぐにお姉様にここに入れられたの。ずっとね。」


「そうか・・・。」




「ねぇにこぇ・・・にこぇは私が怖くないの?」


「・・・俺に剣みたいなものを振り下ろしたのは覚えてるか?」


「・・・うん。覚えてる。」


「俺もゆっくり近づいてくる剣の熱まで覚えてる。その後は覚えてないけどな。」


「・・・・・・。」


「フラン。お前、誰かに叱られたことってあるか?」


「・・・たぶん無いと思う・・・。」


「それじゃさっき出てきたぬいぐるみをボロボロにしちゃったときは何か思ったか?」


「あぁ・・・もう遊べないな、って思った・・・。」


「遊べなくなったら寂しくないか?ボロボロにしちゃいけないなって思わなかったか?」


「・・・でもおもちゃは他にもあったんだよ?お人形だってボールだって・・・」


「それじゃ俺がいなくなったらどう思う?代わりに咲夜と遊ぶか?」


「・・・・・・にこぇが?」


「あの時、咲夜がいなかったらどうなってたんだろうな。」


「・・・・・・・・・。」


「なぁフラン。やっちゃったことは仕方ないんだ。大事なのはその後だ。」


「・・・その後・・・。」


「壊すのは簡単だけど、治すのは難しい。それはお前が一番よくわかってるはずだ。」


「でもにこぇの腕だって・・・」


「それじゃ今度は頭でも吹っ飛ばしてみるか?お腹吹っ飛ばしてもいいぞ?」


「・・・・・・・・・ゃだよ。」


「ぬいぐるみを壊したらまた同じのを作ればいい。
  服を破いたらまた同じのを作ればいい。
  それじゃ俺が死んだらまた俺を作るのか?」


「・・・・・・・・・。」


「間違えちまったことは仕方ないんだ。壊す前に戻ることなんてできないんだから。
  咲夜だって時間は止められても戻すことはできないらしいからな。」


「そう・・・だね・・・。」


「だからな、フラン。一度間違えたら次は間違えないようにすればいいんだ。」


「・・・・・・次?」


「次はあんなおっきい剣は出さないようにしよう!ってな。」


「・・・・・・・・・。」


「算数と一緒さ。最初は誰だって間違えるんだ。
  そして次から間違えないようにするんだ。」


「あ・・・。」


「1+1は何回やったって2にしかならない。でもフランは算数じゃない。
  同じ問題に同じ答えを出さなくていい。好きにやっていいんだ。

  そして間違えたら『ごめんなさい』って謝るんだ。」


「あやまる・・・うん。わかった。」


「わかったって言ったな?それじゃ次からはあんまり物壊すなよ。」


「うん・・・わかったよ。」


「それじゃまた来るな。今日からご飯持ってくるのは俺だろうしな・・・。」


「うん・・・あ、にこぇ・・・」


「どうした・・・?」


「えっと・・・その・・・ごめんなさい。」


「ああ。」







地下から階段を上がり、咲夜に飯でも作ってもらおうかと思ったら美鈴に出くわした。


「お、美鈴。どーした?」


「あ・・・にこぇさん!大丈夫でしたか!?」


「まぁな・・・河童の技術ってのはすごいらしいな・・・。元通りだぜ。」


「良かった・・・咲夜さんったら全然病室に入れてくれないんだから・・・」


「だって騒ぐだろお前?『大丈夫そうですか!?死にませんよね!?』ってさ。」


「そんなことしませんよ~!私はこう見えても・・・」


「そう言うと思ったから入れなかったの。」
声とともに廊下の向こうから咲夜が歩いてきた。


「あーひどいですよ咲夜さん!私そんなことしませんよ!」


「全く・・・怪我人よりぐっすり寝てたくせに・・・。」


「え・・・あははそんなことないですよなにいってるんですかさくやさん。」


「美鈴わかりやすいなぁ・・・」


「あはは・・・にこぇさんまで・・・」


「美鈴・・・寝るときは・・・バレないようにな!」


「咲夜さん相手だと無理なんですけどね・・・トホホ・・・」


「あらあら・・・にこぇまで仕事中に寝てるようね・・・どうしようかしら・・・」


「おっと・・・俺のは仕事中じゃなくて昔の経験だからな。美鈴とは違うぜ。」


「あ!ひどい!にこぇさん!仕事中一緒におしゃべりしてたじゃないですか!」


「へぇ・・・仕事中に・・・」


「あっバカ!そこは喋らなくても・・・!」


「どーせ怒られるなら巻き込んじゃいますからね!」


「ちくしょう・・・もう美鈴にはご飯持ってってやらねー・・・。」


「ちょっ!それわたし死んじゃいますから!」


「でも美鈴って一ヶ月ぐらい何も食べなくてもいいんでしょう?」


「あああああ・・・咲夜さんまで・・・」


「残念だったな美鈴!」


「あなたもよにこぇ。」


「うっ・・・」
それを聞いて美鈴が笑いだす。
つられて俺も咲夜も笑い出す。


横目で見た咲夜の顔が自然な笑顔になっていた。







数日後。

地下室から出てきたフランに俺はまた算数を教えていた。


「よかったな。今回はすぐ出してもらえて。」
問題とにらめっこしているフランの顔もいつも通りに戻っている。


「そうだね!にこぇが頼んでくれたって咲夜が言ってた!」


「まぁな・・・それに、反省したらもう間違えないだろうしな。」
それより、仕事が無くなってしまい、美鈴と喋る毎日になってしまって咲夜の目が・・・


「次は間違えないように頑張るよ!」
問題用紙から顔を上げて満面の笑みで答えてくれた。


「あー、今日も勉強ですか?家庭教師さん。」
どこから見つけたのか美鈴が声をかけてきた。


「職務の方はいいのかい門番さんや。こちらは今仕事中なんだが・・・」


「大丈夫ですよ・・・
  どーせ取られるものなんてパチュリー様の本ぐらいなんだから・・・」
そんなこと言っちゃいけないだろう門番なのに・・・。


「美鈴こんにちはー!」


「あ、こんにちは~♪」
隙をつかれた美鈴の顔がこわばる。


「ちょっと・・・にこぇさん・・・いつの間に妹様に挨拶を教えたんですか?」


「これもお目付け役の仕事かと思ってな・・・。」


「なるほど・・・それじゃ次からはあまり暴れさせないでくださいよ~?
  咲夜さんったら庭の掃除を全部私にさせるんですから・・・」


「あ・・・ごめんなさい美鈴・・・。」
耳に入ってしまったのかフランが美鈴に謝る。


「いやいや大丈夫ですよ妹様!?それも私の仕事ですから!」
それを聞いてさっきより美鈴があたふたしだした。


とりあえず俺の仕事は順調に行っているらしい。
こないだの一件以来、算数以外にもいろいろ教えることが増えた。
それでも遊ぶ時間は有り余るほどあるのだが・・・。


「にこぇできたよー!ほらー!」
ノートいっぱいに描かれた数字をフランが嬉しそうに見せてくる。


「お・・・どれどれ・・・。
  ・・・ちゃんとできてるな・・・。はなまるだぞフラン。」


「やったー!全部できたー!」
ページいっぱいに丸をつけてあげるとフランの目がきらきらと輝きだした。


「ふぅ・・・それじゃがんばってくださいね。お目付け役さん。」


「あぁ・・・元気すぎて困るけどな・・・。」


「にこぇー!次はー?」


「あぁ・・・次はな・・・」


埋まっていくノートのページとフランの笑顔で今日も一日が過ぎていく。

明日はフランに何を教えてあげようか・・・
明日はフランに何を見せてあげようか・・・
明日はフランと何を読んであげようか・・・

彼女といつか一緒に外で遊べるように、俺の日々もゆっくりと過ぎていく。
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咲夜さんSS

書きかけのとこまで。


明日は今と変わらない明日なのだろうか。

一瞬後に続くこの世界は今と変わらない一瞬なのだろうか。

目を閉じる前と目を開けた後の世界は繋がっているのだろうか。


目をつむる一瞬。
耳をふさぐ一瞬。
伸ばす手が空を切る一瞬。

その無と呼ぶべき何も存在しない一瞬。

はたしてそこに意味はあるのだろうか。

退屈としか感じない繰り返す日々を、それゆえに想うことはできるのだろうか。






「だぁー!終わった!」
今の仕事に一区切りつけ、ようやく背を伸ばすだけの余裕ができた。
首を回すだけで部屋の全部が見渡せるような四畳半。
その小さな世界の中でただ一人の住人が首を回している。


「あとは・・・メール出して・・・終了!お疲れ俺!」
解放感からか、徹夜明けのテンションかいつもより大きくなる声を抑えることなく口に出す。
ここ3日ほど寝る時間を削りに削っての作業だ。
もはや普通の精神状態じゃないのは明らかである。


「さぁーて・・・それじゃ好きなだけ寝るかなぁ・・・」
まだ伸ばし足りないのか、ぐぅーっと腕を伸ばしながら立ちあがる。
そこでようやく腹に何も入っていないことに気がついた。


「そういや・・・最後に食ったのって昨日の昼だっけ・・・」
昼といってもずいぶん日が傾いていたし、食べたといってもカップ麺一つだ。
外を見るとそろそろ日が沈みそうなオレンジの空をぽつぽつと人が歩いている。


「部屋には何もないし・・・ちょっとまとめて買ってくるか・・・。」
作業明けに動くことすら面倒だったのだが、腹の減り具合からそんなことなど言ってられない。
迷うことなく部屋のカギと財布とケータイを手に取り、着の身着のまま部屋を出た。


季節はいよいよ冬真っ盛り。
暖房にお世話になる日も増えてくるこの季節。
つい『あったかい』の文字につられて消えていく120円を自重しつつ最寄りのコンビニへ歩く。


「いらっしゃいませ~♪」
お決まりの入店音とそれに負けずとも聞きなれた店員の第一声が出迎える。
恐らくここまで仕事の範疇なのだろう。言い忘れたら減給とかな。


店内を掃除している店員を避けるようにカップ麺やパンを手のカゴに運ぶ。
ここまで腹が減っているとつい目に入るものを全部取ってしまうので商品を取る手が忙しい。
カゴが8割方埋まったところでレジへと足を向ける。


「お買い上げありがとうございます~158円~♪・・・」
手慣れた様子でカゴの中身を準備したレジ袋に移していく。
それを待っている間に眠気が出番と勘違いしたのかあくびが口に出る。


「以上で・・・円です~♪」
レジ袋が二つ目を越えたあたりでやっとカゴの中が空になった。
財布から数枚千円札を出し、おつりを受け取って店を出る。


「さて・・・少し腹に入れたら寝るかなぁ・・・。」
あくびを噛み殺しつつ、部屋に戻った途端に寝てしまう予想を立てて来た道を戻る。


そして部屋のドアまで戻り、手に持ったレジ袋を置いて鍵を取り出しドアを開けたとき、その予想が見事に覆された。


「あれ・・・?」
いつもと変わらない見慣れてもはや愛着すらわく小汚い部屋の中に人が一人。
家を出る前には誰もいなかったし、鍵を閉めて今あけたのだから誰か入れるわけがない。
もちろんこんな寒い中窓を開けるなんてこともしていない。


「こんにちは。ちょっとお邪魔してるわ。」
さらに困ったことに見たことも聞いたこともない声と格好をしている。
そもそもこの格好を外で見たことがあるのなら記憶の片隅にでも残っていそうなものだが。


「えーっと・・・どちら様で?」
とりあえず家主としてここは聞いておかねばなるまい。
部屋の外で鍵を開けた状態のまま口だけを動かして聞いてみる。


「ごめんなさい。私も来たばっかりなの。」
まともに質問に答えてもらえてない気もするが・・・とりあえず日本語だ。
顔は日本人らしいのだがいかんせんその格好で違和感が残ってしまう。


「来たばっかりって・・・どちらから?」
とりあえず話を聞いてみる。
一歩間違えれば空き巣確定なこの状況でのんきに質問している場合ではないだろうが。


「ここじゃない世界のスキマからよ。
  まったく・・・どこに飛ぶかわからないからって誰かの家に飛ばすことは無いじゃない。」
まさかの電波発言。
喋り方ははっきりしているし、その格好以外はまともそうなのだが。


「こっちじゃない世界ですか・・・。
  それで・・・なぜか俺の家に出てきた・・・と?」
とりあえずそういうことだと納得しておこう。
怒らせると何をしでかすかわからないのが電波だ。触れぬオタクの自己満足。


「そういうことね・・・ごめんなさい。完全なとばっちりで。」
口調から向こうもうんざりしているのだろう。
そして言い終わると、腰に手を当て部屋の真ん中にあるちゃぶ台兼仕事机に腰を下ろした。


「まぁ・・・見られて恥ずかしいだけの部屋なんで特に迷惑は無いんだけど・・・。
  えっと・・・お嬢さん・・・名前は?」
向こうが動いてくれたのでようやくこちらも部屋に入ることができた。
はいていたサンダルを脱ぎながら部屋に上がる。


「十六夜咲夜。すぐにいなくなるかもしれないから覚えてもらわなくても結構よ。」






「十六夜・・・咲夜・・・か。んでこっちの世界には何しに来たんだ?」
とりあえず彼女の話に合わせよう。
例え宇宙人が出てきても何事もないように・・・


「お嬢様にお使いを頼まれたの。ぬいぐるみを買ってきてほしいってね。」


「オジョウサマ・・・えっと・・・それは・・・」


「向こうの世界で私が仕えてる吸血鬼よ。
  なんでも妹と喧嘩してその仲直りに珍しい人形でも持ってきてほしいらしいわ。」


「ヘーキュウケツキデスカ。スゴイデスネ。」
吸血鬼と来たか。しかも妹までいるとは。
人形ってのは彼女の女の子らしさのアピールなのか?


「遠くを見るような眼しないでちょうだい。嘘は言ってないわ。」
そう言って真面目な眼差しでこちらを向いた。
睨みつけるほどではないが流石に穏やかではない。


「了解しました。
  向こうの世界から吸血鬼のお嬢様に命じられてこちらに来たんですね。」
話の流れから彼女の職業は従者なのだろう。
暗殺とかその辺が得意そうなスキルとかもってそうな・・・。


「わかっていただけて嬉しいわ。それじゃ少しお世話になるわね。」
そういって笑顔を投げてくる。
営業スマイルとは思えないほど完成された表情に逆に背筋が凍る。


「世話になる・・・?人形を買うのにそんなに時間がかかるのか?」


「私が向こうの世界に帰るまで少し時間がかかるらしいのよ。
  結界が少し弱くならないと人一人を移動させるのは難しいらしいわ。
  それに、スキマができる場所も変わらないらしいからここをあまり離れたくないのよ。」


「なるほどな・・・」
ずいぶんと細かい設定だな・・・
そしてまとめると数日間タダ飯食わせろってことか。
家出して来たような年にも見えるが・・・まぁ仕事が終わったばかりだし泊めてやるか。


「んじゃ・・・俺は寝るから好きにしてくれ。部屋から出るときは鍵を閉めてな。
  ・・・っと。合いカギどこだったっけ・・・」
とりあえず一段落したところで体を休めよう・・・。
思い出せばここ何日か徹夜だったじゃないか・・・。


「合いカギ?何か目印とかないの?」
部屋の中を探す俺に彼女が尋ねる。


「一緒に探してくれるのか?
  たしか・・・犬のストラップつけてたな。」
鍵がありそうなところを漁って背を向けたまま答える。


「犬・・・ってことはこれかしら?」
鈴の音に顔を向けると、彼女の手に久しく見てなかった合いカギがあった。


「あぁそれだ。その辺に落ちてたのか?」
確かなんかの本に挟んでたような覚えがあるんだが・・・。


「あなたの反対側にあったわよ?こっちにある本の間にね。」
彼女の示した方向には脱ぎ捨てた服がそのまま放り出されて出来た山があった。
そういえばその下には読んだばかりの小説が置いてあったような気もするけど・・・。


「そっちだったか・・・。見つけてくれてアリガトな。
  それじゃそのカギはえーっと・・・咲夜が持っててくれ。」


「わかったわ。それじゃおやすみなさい。
  寝るのはこのあたり?他に部屋は無いみたいだけれど。」
適当に畳んだ布団の方を向いた後、彼女が腰を上げ、そのままドアの方へ向っていく。


「あぁ。他に布団がないんだが大丈夫か?」
すれ違うように布団の方に移動した俺は布団を敷くだけの場所を確保するために散らかった部屋の片付けに移る。


「大丈夫よ。問題ないわ。」
そう言って彼女はドアを開け、外へ出ていった。


「ふぅ・・・いったい何なんだろうな・・・。」
口には出すものの頭は疑問よりも眠気でもはや停止寸前の状態。
とりあえず寝てから考えよう・・・。


外から鍵の閉まる音が鳴る前に俺は3日ぶりの眠りに落ちた。






「んぁ・・・・・・」
目をつぶっててもわかる眩しさでやっと目が覚めた。
寝る前は日が沈む前だったので半日以上寝ていたのだろう。


「ぁ~・・・・・・。・・・あ?」
目を開けて体を起したところで異変に気付く。


(あれ・・・ここ俺の部屋か?)
目をこすりながらだいぶ綺麗になっている部屋を見回してみる。
脱ぎ捨てた服も畳まれ、放り出したままだった本もきちんと壁に整理してある。


「あら。やっとお目覚め?」
後ろから声が聞こえたのでその方を向くと昨日と変わらない様子の咲夜がいた。


「部屋・・・掃除した? だいぶ綺麗になってる・・・けど・・・」
目が覚めたばかりでまだ頭が回らないまま咲夜にこの現状を聞いてみる。


「とりあえず床が見えるぐらいにはね。
  一応ここに置いてもらうのだから出来ることぐらいはしないと悪いわ。」
そういって彼女は立ちあがると冷蔵庫の方に向かう。


「何か食べる?最近何も食べてなかったんでしょう?」
そう言って冷蔵庫を開けて中を見る。


「あれ・・・冷蔵庫の中空っぽじゃなかったっけ・・・?」
ようやく頭の中がすっきりしてきたようだ。


「さっき外に出たついでに買ってきたわ。
  お金を持ってなかったから少し頂いたけれど。」
そう言われてテーブルの上にある財布に気付く。
たしか帰ってきてそのまま財布やらケータイやらをここに置いたまま寝てしまったな。


「まぁ飯作ってくれるのはありがたいけど・・・
  流石に勝手に財布持ってって物買われるのはあまり嬉しくないぜ。」
ケータイを開いて時間を見ると昼を少し過ぎた頃らしい。
ついでに財布の中身も見てみるが千円札が一枚なくなっているぐらいだった。


「向こうでもお嬢様たちの食事は私が作っていたから味の方は大丈夫よ。
  こんなお湯だけでできるモノよりは体にいいわ。」
そう言って冷蔵庫から野菜を取り出して台所の方へ持っていく。
既にご飯は炊けているらしく、炊飯器に保温のランプがついている。


「おいおい・・・お嬢様って吸血鬼なんだろう?
  人間の血の料理なんか出されたって困るぜ?」
することがないので少しすっきりして寂しくなった部屋をうろついてみる。
ついでに寝ていた布団も押し入れに戻して置いた。


「そんなもの出さないわよ。吸血鬼だからって毎日人間を襲うわけじゃないわ。
  昼間は寝ているけれどね。」
てきぱきと野菜を洗って切る工程に入っている咲夜。
俺は暇になってしまい、適当に本を引っ張り出して目をそちらに移しながら会話を続ける。


「流石に太陽の光は克服できてないのか。
  そいつは安心できるな。」


「あら。日傘さえあれば外には出れるわ。
  妹様は元気すぎて日傘の外に出てしまうから出れないけれど。」


「へぇ・・・そんな元気な吸血鬼の妹様に殺されたりはしないのか?」


「最近まで屋敷の外どころか部屋の外にすら出れなかったのよ。
  確かに好き勝手されたら私でさえ命の保証は無いわね。」


「それじゃ他の住人は大丈夫なのか?」


「他には魔女と妖精のメイドしかいないわ。人間は私一人よ。」


「そんな状況じゃなおさら不安じゃないか。非常食か?」


「悪いけどそんなに険悪な関係じゃないわ。向こうには向こうのルールがあるわ。」


「そんなもの守る吸血鬼なんてどこの国のおとぎ話にも載ってないぜ?」


「それはそのはずだわ。人外の上に人が立つなんておとぎ話にならないじゃない。」


「ってことは案外屋敷のトップはお前さんなのかい?」


「残念だけど私の能力じゃお嬢様には敵わないわ。せいぜい足止めが精一杯ね。」


「能力ねぇ・・・なんか持ってるのかい?」


「そんな面白がるものでもないわ。時間を少しいじれるだけよ。」


「そいつは便利だな。まさに足止め用の能力ってやつだ。」


「あら。他にもあるわ。気づかれずにナイフを投げるぐらいは出来るのよ?」


「それじゃ足止めにならないぜ。」


「時間を止めるだけで止まってくれるようなら仕えたりしないわ。」


「なんだそれ・・・どういう設定だよ・・・。」


「あら。信じてくれてないの?」


「まぁ家出の一言で済まされるよりは楽しいさ。
  それでスキマとやらはどんな形なんだ?タクシーか?リムジンか?」


「あらあら・・・ずいぶん勘違いされてるようね・・・。
  嘘は言ってないってちゃんと言ったじゃない。」


「残念だけどそんな設定を一言聞いて信じてくれるのはやっぱりお話の中だけだぜ。」


「それじゃこれで信じてくれるかしら?」
そういって台所にあったコップに冷蔵庫の中の麦茶を入れる。
そしてそれを空中に放り投げてフライパンの中身を皿に移し始めた。


「お前何して・・・・・・あれ?」
口から驚きの声が出ると同時に俺の前に野菜炒めとご飯とみそ汁、それにさっき放り投げたコップと麦茶が置いてあった。


「安心して。一滴もこぼしてないわ。
  味噌汁なんて久しぶりに作ったわ。お嬢様の口には合わないのよね。」
そう言ってフライパンを洗っている彼女の後姿を見ながらさっきの一瞬を振り返ってみる。


(ビデオを早送りしたような・・・さっきまで何もなかったはずだ・・・
  それに・・・放り投げた麦茶を全部元に戻すのだって・・・)


「どうしたの?冷めるわよ。」
口の端に笑いが見える咲夜から目を反らし、目の前の料理に手をつける。


どれも文句のつけようが無いほど美味かった。





「・・・・・ごちそうさん。」
久々のまともな飯に驚くほど箸が進んだ。
最近はしてなかったものの、自然に手を合わせてしまったのもうなずける。


「お粗末さまでした。」
一言残して咲夜が空になった食器を台所の方へ運んで行く。


(これならどこ行っても働けるだろうに・・・。人付き合いが下手なのか・・・?)
そんなどうでもいいことを思っているうちに、こちらに背を向けたまま咲夜が皿を洗いだす。


「いやぁ~・・・美味かった。これなら吸血鬼のお嬢様もご満足だな。」
腹も膨れ、余裕ができた俺は背を反らしながら皿を洗う咲夜の後姿を眺めていた。


「そうね。普段はこういう食事で満足してくれるんだけれど。」


「やっぱたまには一味違ったモンが食いたくなるわけか。
  いや、飲みたくなるって言った方が正しいのかも知れねーけどさ。」


「最近はあまり無いわね・・・。たまに食事に混ぜているからかしら?」
さらりと言った一言だったが、彼女の手作りの料理を食べた後だと聞き過ごせない。


「さっきの料理は美味かったぜ。
  あんたの血をかけると美味くなる、とかあんのか?」


「今回は入れてないわ。
  そもそも貴方に飲ませるほど安くないわよ。」


「それでも金がないってことは誰も飲みたがらないんだな。
  お前さんのとこのお嬢様ってのはちゃんと払ってくれないのか?」

ヒュッ――――・・・ストン。


言い終わるや否やこちらに何か飛んできた。


「洗い物は済んだわ。この家にお風呂はあるのかしら?」
蛇口にかかっていた布巾で手を拭きながら咲夜がこちらを振り返る。


「一応・・・共用の風呂が一階に・・・。」
さっき飛んできたものを確認したいところだが、咲夜の顔から目が離せない。


「わかったわ。それじゃお風呂に行ってくるわ。」
そう言って彼女は何も持たず玄関へ向かい、そのまま外へ出ていった。


ドアが閉まってようやく首が回るようになった。
さっきの彼女の目はいつもと変わらないようだったが・・・。


(少し言いすぎたか・・・?まぁいいか・・・。

  ・・・・・・俺も風呂の準備でもするかな。)
そう思って体を起こしたとき、さっき何かが飛んできたあたりに小さなへこみができてるのに気付いた。


(あいつ何を投げたんだ・・・? というか投げられたものが見当たらないんだが・・・)
いつもの散らかった部屋ならともかく、今は部屋の中が片付いているのだ。
何もない身の周りに違和感を覚えつつ、俺は自分の服を取りに立ち上がった。





「ふぅ・・・・・・ただいま、っと。」
風呂から戻った咲夜と入れ違いで部屋を出た俺は、そのまま真っすぐに風呂へ向いまっすぐ帰ってきた。
俺がいない間に彼女が何かするとすれば既に機会はあったろうから心配はしていないが、流石に彼女一人を部屋に置いておくわけにもいかないだろう。
来客が来たりでもすれば説明が面倒だ。


「おかえり。」
夕飯前と変わって、急に口数が減ったような気がした。


「・・・こっちの世界の湯加減はどうだった?」
どうにか彼女と会話ができないかと、思いついたことをそのまま口に出してみる。


「特に変わらないわ。・・・何を期待してたのかしら。」
ぴしゃりと言い切られ、自分の家なのに居場所が無くなったような心境になる。


(結構根に持つなこいつ・・・。そんなに気に障ったか・・・。)
そんなことを思いながら、脱いだ服を洗濯かごの前まで持って来たときかごが空なのに気付いた。


「あ・・・俺の服、洗濯してくれたのか?」
いまだそっぽを向いている咲夜の方へ顔を向けて聞いてみる。


「洗って干しただけよ。それで十分でしょう?」
そういいながら彼女は手に持っていた本に目を戻した。
その本は俺の部屋のものだったが、恐らく掃除した時にでも見つけたのだろう。


「洗って干した・・・?乾燥機が下にあったはずだぜ?」
この寒い中手洗いでもしたのだろうか?


「あなたの服なんてそれで十分でしょう?数だって少なかったじゃない。」


「まぁやってくれる分には嬉しいんだが・・・。それにしたってその言い方は無いぜ。」


「そうね。今度からは言葉を選ぶことにするわ。」
そう言うと、彼女は読んでいた本を元の場所に戻してテーブルの上にあった新聞に手を伸ばした。


(全く良い意味に聞こえないぜ・・・。)
そう思いながら俺はパソコンの電源を点けた。


画面の方を向きなら視界の端にいる咲夜を見る。
なにやら新聞を眺めては指でなぞりながら何かを呟いている。


何をしているのか考えているうちにパソコンの起動が終了したようだ。
見慣れたデスクトップ上にメールソフトを立ち上げ、返信が来ていないか確認する。


(メール読み込み・・・お、新着一件・・・確認のメールか?)
スパムはすでに迷惑メールに登録済みなため、このアドレスに来るのはほとんど会社とのメールしか来ない。
まれに登録されていないスパムが来ることもあるが・・・。


(読み込み完了・・・あれ?もう一件未読のメールが・・・。)
会社からのメールは件名から見て、恐らく送信した企画書のメールだろう。
修正を何度か行い、今回で完成との話だったはずだ・・・。


(おかしいな・・・さっき新着メールは一件だったはずだけど・・・)
件名どころか送信元アドレスすら書かれていないそのメール。
会社から来たメールの本文を目で追いながら意識はもう一通のメールに奪われたままである。


(ふぅ・・・確認もらえたし、これで後は向こうに任せるだけ・・・か・・・。)
会社からのメールの内容を読んで今一度、一仕事終えた気分が押し寄せてくる。
毎回ここまで来るのにいくつも山を越えて来るので、こればかりは何度経験しても嬉しいものがある。


さらに、締め切り直前はプライベートどころか寝る時間さえ無いスケジュールになるため、そのあとは数日間まとまった休みができるのだ。
今回も五日ほど羽を伸ばす時間がもらえた。


(・・・・・・さて・・・。)
背を反らしながら、改めてもう一通のメールに目を向ける。
表示されているのは件名とメールアドレスだけだがそのどちらも空欄である。


(メルアド無しでメールって届くもんなのか? そもそもこんなことどうやってやるんだ?)
新手のスパムという可能性もあるが、そもそもこんな手の込んでそうなことはしてこないだろう。


(・・・・・・まぁ開けていきなり何か飛び出してくるわけでもないだろうからな・・・)
そんなことを思いながらそのメールをクリックして開いてみる。


(何が書いてあんのかな・・・・・・って・・・あれ?)
内容が表示されるウィンドウには何も表示されていない。
件名とアドレスに続いてまで本文まで空ってか・・・?


(なんだこれ・・・・・・悪戯とかか・・・?)
ちょっとした期待を裏切られたような気がしてそのままメールソフトを閉じようとしたとき、本文のウィンドウの横にスクロールバーが現れた。


(・・・・・・さっきまであったか?)
今度こそ何か書いてあるだろうとイラつきながら、スクロールバーを下へ引っ張る。


(・・・・・・だいぶ長いな・・・おっ、やっと文字が見えた・・・)
本文の七割目あたりまでスクロールしてようやく空白の中に黒いものが見えてマウスから手を離した。


そこには短い文が一行。


(・・・・・・『彼女をお願いね』・・・?)
これだけ何かありそうな雰囲気を出しておいてそれだけかよ・・・しかも意味わかんねーし・・・。


ため息交じりにメールソフトを閉じてこのあと何をしようか考えているうちに視界の端に咲夜が映った。


(『彼女をお願いね』って・・・こいつのことか?)
確かにそう考えれば納得いくが・・・だとしたらこいつは最初から俺の部屋に来るつもりだったってことか?



およそ8割ほどまで新聞を読み終えた咲夜は変わらず指で新聞をなぞっている。


(ったく・・・ようやく休みだってのにこれじゃ気が休まらないぜ・・・)
そんなことを思いながら、結局俺はパソコンを閉じて数日ぶりのゲームに励むことにした。


(腕落ちてなきゃいいけどなぁ・・・)
久々にテレビの電源を入れ、ゲーム機を取りだそうとしたとき、咲夜が口を開いた。


「ねぇ、にこぇさん・・・だったかしら?ちょっといい?」
急に名前を呼ばれて一瞬体が固まる。


「ど・・・どうかしたのか?改まって・・・」
とりあえずゲーム機をそのまま元に戻して彼女の方に向き直る。


「あなた、この近くで働き口があるところを知らないかしら?
  出来れば数日間だけで済むようなのが良いんだけれど。」


「働き口・・・バイトか。ん~・・・あったっけなぁ・・・」


「ここから歩ける範囲が良いわ。」


「歩ける範囲・・・そーいや近くのコンビニがバイト募集してたような・・・」


「コンビニ・・・ここから真っすぐ歩いたところの店かしら?」


「そうそう。あそこが夜間のバイトを募集してたはずだ。そんな張り紙が貼ってあったよ。」
こいつなら年齢制限も大丈夫だろう。
面接みたいなのがあるのなら問題無く入れるはずだ。


「夜間・・・今から行っても大丈夫かしら?」


「確かに時間的には今ぐらいだけど・・・どうして急に・・・?」


「ぬいぐるみを買うにはお金がいるわ。それに貴方に返さなきゃいけない分もあるわけだし。」


(あぁ・・・あんまりあてにはしてなかったけど返す気はあるんだな・・・。)
そんなことを思いながら彼女の話にうなずいた。


「それじゃちょっと聞いてくるわ。」
そういって彼女は新聞を元の場所へ戻して玄関の方へ歩いて行った。


「暗いから気をつけてな。それじゃいってらっしゃい。」
彼女の言葉を聞き終え、俺は再度ゲーム機に手を伸ばした。


「えぇ、行ってくるわね。」
そう言い終わるとドアが開き、外の風が入り込む前に閉まった。


(バイトか・・・ただの家出じゃねぇのかもな・・・・・・)
そんなことを思いながらテレビに向き直り、ゲーム機の電源を入れた。

昨今のいじめに関する個人的かつ客観的でない考察。

はい。というわけでタイトル通り書いてみようと思います。

やろうと思った原因はブログを更新するネタがなかったからなんですが、意外と今日までに書くことが見つかってしまい、むしろこの記事で書くことの方がないんじゃねーかwとも思ったんですが、まぁ考えた分でも書いてみようと思いカタカタ打っております。

とりあえず先に注意書き

・以下に書かれていることは私の主観的かつ実体験を踏まえた考察である。
 よって一般的ではないであろうことを先に述べておく。

・書く前にまとめていたりしないため、結論に行きつくどころかどこへ向うのかすらわからない。

・そもそもなんでこんなことをしようと思ったのかすらおぼえてn(ry


それでは書いていきましょう!!


まず前提と言うか仮定。

・人間の行う行為に「善悪」や「価値」というものはない。

某世間的海賊冒険譚漫画であった「正義が勝つんじゃねぇ、勝った方が正義なんだ」って言葉やら、「一人殺せば殺人者でも千人殺せば英雄よ!」とかありましたが、結局人間の行為そのものには、元々善悪の区別は無いわけです。

例えば、人を殺すなんて言う行為は人間として最もやっちゃいけない行為だとか言われてますが、これが戦時中で殺した相手が敵国の重要人物だったりしたら一躍英雄になれるわけです。
つまり戦争中という条件があれば、殺人が国を挙げて奨励され、国から賞賛されるに値する行為となるわけです。
人としてやっちゃいけない行為でありながら、時と場合によってはむしろ最優先で行うことを求められる行為となるわけです。

まぁ殺人なんて一番わかりやすく聞きあきた例えだとは思いますので食事という例を上げてみます。

食事とは本来、生きていくために必要な栄養を口から摂取する行為です。
しかし現在では、栄養バランスやら摂取量、食べ方のマナーだの毎日同じものを食うなだのいろいろな一般常識的制約がついてまわります。
つまり、本来の目的を満たす「必要な栄養・カロリーを満たす食事」を得るために毎日同じものを食べることはまず褒められませんし、毎日違うものを食べるために外食ばかりしていてはお金がいくらあっても足りません。
また、ある日作った食事を次の日の分まで作っておき、数日間同じメニューで食事をとることは一般的には問題の無い行為であると思います。

何が言いたいかというと、常識という物差しがあったとして、殺人に関しては「物差しの数字の意味が変わる」ことを、食事に関するところでは「物差しがあいまいである」こと。

この物差しというのは常識という呼び方をされると思うんですが、一人一人の常識は必ずしも一致しません。
「サラダに何をかけて食べるか」という嗜好に関する物差しは更に曖昧になり、個人差が大きくなります。


(以下で使用する「物差し」とは価値観や常識のことを指すと思ってください)


つまり、人によっては許せるレベルの行為や考えが、別の人からすればありえない行為として捉えられることがある。
これは、一人一人の物差しの違いによるものである。

よって、人の行為や考えに対する善悪や価値というものは、他人の物差しによって評価された結果であり、行為や考えそのものに価値は無いわけですね。

人の物差しが、完全に統一されていれば価値や善悪は絶対のものとなり、犯罪が起きたり争いがおこることも無いでしょう。
これこそが理想の世界だ!なんてほざくつもりは毛頭ありませんし、そんな世界つまらないとは思いますがね。


というわけで、ここまでで言いたいことは以下の二点です。
・人の行為に価値や善悪を付与するのはそれを受け取る他人や周りの物差しによるものである。
・このことから物差しは称賛される行為を非難の対象にも出来る非常に危険なものであるが、この物差し自体がとても曖昧なものであり、正確に物差しの長さやメモリを把握することは不可能に近い。


んまぁ、まとめると物差しはすごい大切なものってことですね。


ではではいじめに関する話に入っていきます。
ようやく本題です。むしろここまでの方が長いかもしれませんなwww

個人的に、ここ最近のいじめと昔のいじめはだいぶ内容が変わってきたと思います。

昔のいじめってのはおもに不良連中がやっていたものであり、ストレス発散やら金欲しさのアホな行為ということでまとめることができました。
いじめの発端は金銭要求であり、これを断られた加害者側が暴力に及ぶという図式が一般的だったとも思います。

変わって最近のいじめでもストレス発散や金欲しさという見方に変わりはないのですが、金欲しさよりはストレス発散の方が多くなる傾向があり、金銭要求から始まるいじめはほとんどないのではないでしょうか。
また、加害者となる人間には相変わらずアホな連中は多いですが、一部頭の良い「そんなことをするような子には見えない」タイプの子供がいる場合も少しずつ見られるようになってきました。

こういった頭のいい連中がいじめに加わるように理由として、勉強ができることに関する価値が下がってしまったためだと思われます。

昔は勉強ができればそれだけで「自分という存在を親や先生という他人に認めてもらう」ことができ、学生や生徒が勉強を頑張るという行為に価値を持つことができたわけです。
しかし最近では、大学まで行くのが当たり前であり、勉強の過程は一切気にせずテストの点数や成績という結果だけで評価されることが多くなりました。

人間は他人からの評価を求める生き物であり、当然評価は良い方がいいと考えています。
成長過程にある子どもにとって、学校における勉強とは最も競争相手の多くイメージがしやすい評価の対象であり、親にとっても運動のようなあいまいな基準よりも数字として分かりやすく結果が出るテストや成績の方が判断しやすいのです。

成績やテストの結果というものが出ましたが、学校の授業は全ての生徒に平等に行われています。
しかし、テストの点数は一人一人高い低いが出てしまうものです。
これは学生一人一人の勉強に対する姿勢や勉強を行う方法による違いであると考えられます。

しかし、同じ授業を受け、友達と同じ塾に通い、同じように試験勉強をしたとしてもテストの点数は違ってきてしまいます。
ここまで同じ条件でテストに臨んだのになぜ違いが出てしまうのか。
なぜ友達の方が良い点数で自分の方が悪い点数なのか。
まぁこの辺は学生自身が考えすぎることによってネガティブ思考に陥り、いじめというよりは引きこもりや自殺なんかの原因になるかもしれませんが・・・。

とりあえず話を戻しまして、勉強をどれだけ頑張ったとしても思うような点数が取れないことは子ども自身にとっても、親にとってもあまり良い結果ではありません。
また、小学校の中学校以降のテストの違いとして以下のような点があります。

・小学校でのテスト:「子供の思考力を延ばす」ことやテストというものに慣れさせるという点が重視されているため難易度が低く、100点近い点数が取れるようにテストが作られている
・中学校以降:「授業で行ったことの確認」といういわば授業の習熟度を点数として出させ、成績に反映するためのテストとなっている。

最近だと小学校高学年から「成績反映用のテスト」を行う体制になっているのかもしれませんが、結局小学校でのテストから中学校のテストへ移ると「勉強しなければ点が取れないようになっている」わけです。
また授業の方法も変わり、科目も増えて競争相手となる生徒の数も増え、しかし一方で部活動や遊びの枠も増えるこの時期に小学校のテストとなんら変わらない点数を取るというのはよほど勉強に力を入れなければなりません。
しかし、そうして勉強に力を入れたとしても結局成績が思うようなものでなければ「更に勉強しろ!」と怒られるわけですし、思うようなものでも小学校から100点ばかり取ってきたせいで「出来て当たり前だろう」と親が思ってしまっていれば、結局子供にとってはおもしろくない結果となってしまいます。

結局、どれだけ勉強しても良い点を取れなければ「勉強しろ!」と言われ、どうにかして良い点を取っても「次も同じ点数をとれるように頑張れ」と言われるのですから、これで子供に勉強をする気が起きるわけがありません。
また、現在の授業に対して「面白い」と思えるような生徒や学生が少ないのも勉強がつまらないと感じてしまう原因の一つでもあるでしょう。

こういったところから成績が良くない子供だけでなく、成績が良い子供でもストレスがたまってしまい、結果として家庭と学校側とが複合的に原因となる子供のストレスが生まれるわけです。


さて、ここまで言ってきたことをまとめましょう。
・小学校から中学校へ上がると、良い成績を取ることが難しく勉強により力を入れなければならない。
・勉強に対する親の観点が結果だけに向いてしまい、どれだけ勉強を頑張っても良い点数でなければ評価されない。
・結果としていじめの加害者となる枠が増え、学校という施設が生徒にとってつまらないものとなり、もはや勉強をする意欲が失せる。


というわけで、学校という場でいじめによるストレス発散を行いたくなってしまう生徒が増える原因をぱーっと上げてみました。

次は、いじめの被害者がどのように選定されているかを書いてみようと思います。
まぁこれはあまり書くことが無いのですが・・・一言でいってしまえば「誰でも良い」ですよね。

人間誰しも得意不得意はあります。
足が速い人間もいれば遅い人間もいるし、喋りが上手い人もいれば人前に上がるだけであがっちゃうような人もいるわけで。
昔であれば(自分のイメージですが)、マイナスな特徴を持っている人間のみがいじめの対象となっていました。
弱気な人間や力の弱い人間。まとめて言えば「いじめても反抗しない人間」。

しかし、現在のいじめでは逆にプラスな特徴を持っており、クラスの中で目立っている人間が逆にいじめの標的となることも珍しくはありません。

そもそも、昔は他人へのねたみやひがみというものは表に出さないものでした。
けれども現在では、昼ドラの普及か何なのかは知りませんが自分よりも優れている他人をどうにかして自分よりも下の立場にしてやりたいと思うことが普通であるように考えられているのではないかと思います。
そういったところから、クラスの人気者をどうにかしてつぶしてやろうと考えることも普通の流れなんだと思われてしまいます。

そうして、いじめの標的とされた子供は、どこまで行っても結局子供ですからいじめに対する対抗策を持ち合わせていません。
そして昔と変わらずいじめを受けた子供はひたすらいじめられていることを隠そうとし、他人には絶対に話そうとしないため、結局はいじめの加害者側が飽きるのを待つか、被害者側が二度と学校に来ないことになってしまうわけです。


以上で「いじめが起こる原因」、「いじめの標的となる原因」の二つを挙げました。
ここまで一切前提で上げた物差しの話が出てきてないわけなんですが、最後に物差しの話を絡めて最近話題のあの事件を語ってみようと思います。

最近話題となっている某県のいじめの話題ですが、何故ここまで話題になったのかを考えると「いじめの内容が酷過ぎる」ことが原因なんじゃないかと思います。
んまぁ警察が一般人の為に何もしないのはもはや定着しきってるとは思いますし、教育委員会があそこまでクソなのは衝撃でしたのでこれが原因かもしれませんがwww
学校側の対応ももはや腹が立って仕方ないのでここ数日はニュース番組見てないですけどねww

んで、なんであそこまでいじめがエスカレートしたかを考えると「いじめがあったのが中学校だったから」っていうのが一番重要なんじゃないかと。
小学校じゃ周りがそこまで無関心じゃないし、学校側の先生ももうちょっと人間味ある人がいるとは思う。
高校だとそんなことする連中とされる連中が同じ学校にいないでしょうからね。

そしてなぜあそこまで酷いいじめができたのかってのは単純に「物差しが不完全だから」だと思います。
たぶんこれ以上にわかりやすい答えは無いんじゃないでしょうか。

結局中学生の物差しってのは「実体験は無いけど知識として持っている」ことが可能であると考えてしまうようなものなんですよね。
テレビで見たからできる、本では大丈夫だって書いてあった、誰かから聞いたから・・・。
こういったことが「可能なんだって思って実行できる」のはまぁ中学生全体じゃなく一部だとは思いますが、実行できるかもなぁ・・・ぐらいなら誰もがあると思います。

結局そこでブレーキをかけられるのは自分だけですし、なにを持ってブレーキを踏む基準とするかは物差しの目盛を見て決めるわけですな。
その物差しが不完全である以上、何が正しく何が間違っているかが判断できず、自分の考え一つで実行することもブレーキ踏むこともできるわけです。

ブレーキという単語が出てきたので、今回のいじめの件を車に例えるなら「ずっとまっすぐの道を目隠しして走る」ようなもんなんでしょうね。
ずっとまっすぐならもっと加速していいだろう、加速してもぶつからないならもっと加速しよう、おぉ速くなったwwwやべぇwwwちょうはえぇwwwwww
んで徐々にハンドルが右に左に回っていつかは道を飛び出して取り返しのつかないことになるわけですな。

今回のいじめは自殺まで発展する前に止められる希少なケースだったと思います。
しかし、こうして行くところまで行ってしまった以上、しっかりと今回の事件を踏まえて国の上の方々には人間として当たり前の生活ができるよう努力してもらいたいもんです。


個人的な意見をいうと、今の日本に必要なのは大切な誰かを自分が守る、という意識じゃなくて大切な誰かに自分を守るすべを与えることだと思いますけどね。
あとは安全を過信し過ぎないこと。去年の大地震も原発の件も。
何かが起きた時にどう行動すればいいのかを最低限頭の中でシュミレートできるように知識を得ておくってのは大事なことだと思います。

というわけで、疲れたのでこの辺で終わり。

SSらしき何かを書いてみた。

昨日投下しようと思ったんだが・・・FC2の調子が悪く何度ログイン画面を見たかわからんあげく結局上げられないとかね・・・。

とりあえず一昨日ぐらいに書いたSSの冒頭をコピペ。
感想なんかもらえると嬉しいです!

一応グロ注意。





 茜色から濃い紫へと空が変わりゆく様を木々の隙間から眺めながら、男は薄暗い森の中を歩いていた。
通るものがほとんどいない深い森には道と呼べるものは存在せず、地面を覆っている雑草を一歩一歩踏みしめて歩く。
村の者、ひいては人間が好んで入ろうとしない“魔法の森”と呼ばれるその場所は、まさに人間と人間ではないモノとを分かつ境界線と呼ぶに相応しい雰囲気をかもしていた。
日中でも薄暗い森の中は、いつ木の陰から人ならざる者が飛び出してきても不思議ではない、そう思わせる何かが辺りにたちこめている。
足を止め、背中に担いだ籠を背負い直して中の薪の量を確認した男は、もう日が落ちるまであまり時間がかからないことを考えて、娘を残してきた森の入口へ戻ることにした。

 わざわざ男がこんな不気味な場所へ足を踏み込むこととなったのは、娘の希望を叶えるためであった。
夜になり家の中が真っ暗になると、男の家では火をともして明かりを得る。
村の中ではごく一般的な夜の過ごし方であるこの方法が、娘はあまり好きではないらしく、弱々しい光や立ち上る一筋の煙に時々けちをつけることがあった。
そんな娘が、どこからか魔法の森には自ら光を放つ茸が生えているという情報を手に入れたらしく、子ども一人で立ち入ることを禁じられている魔法の森へ、父親である男を向かわせようと躍起になっていたのだ。
男はそんな話を頭から信用していなかったが、あまりにも娘がせがむので、家で火を起こす際に使う薪を集めるついでに光る茸とやらを探してくるという約束をしたのだった。
案の定、娘は自分も森の中へと入りたいと言い始めたが、村が見えるところまでしか森に入ってはいけないといい付けると、しぶしぶ了解した。

集めた薪が十分な量になるまで散策したが、結局光る茸なんていう物は見つからなかった。
この事実を娘が納得するようにどう伝えるかを考えながら、男は来た道を戻っていった。
気を抜けば自分が歩いてきた道さえも分からなくなるほど、森の中は暗くなっている。
残してきた娘のことを思い、男は足を速めた。

男が足を速めたのとほぼ同時に、男の向かう先から鋭い悲鳴が放たれた。

「――――――――ッ!」

それが娘のものだと気づく前に、男は音の方へと全速力で走った。
この森には人以外の何かが現れることを男は知っていたが、まさか森の中ではなく入口にいる娘の方へとは考えていなかった。
頭に浮かぶ人ならざるモノの姿を振り払いながら、男は来た道を必死に走り抜けた男の眼に映ったのは、まだ幼いと呼べるであろう我が子と、娘と背丈の変わらぬ程の少女の姿であった。
黒いワンピースと頭に大きなリボンをつけた少女が娘に抱きつくその光景は、一見じゃれあっているようにもみえるが、既に娘の服は彼女自身の血で真っ赤に染まっていた。
ひざから崩れ落ちるのを懸命にこらえる男を背に、少女はもう一度大きく口を開け、小さく痙攣している娘の喉元に喰らいついた。

「この・・・この化け物がッ!」

既に血の気の引いている娘の姿に我を忘れた男は、少女の背中めがけて拳を突き出した。
それに気付いた少女はゆっくりと振り向き、娘を抱きあげていた右手で男の拳を受け止めた。

「くっ・・・畜生め・・・」

向かい合った少女は、口の端に赤い血を滴らせながら口を開いた。

「お前も食べて良い人間かぁ?」

少女の一言に、男が恐怖に貫かれたのを見てとると、少女は開けた口をさらに開いて

「いただきますなのだー。」

そのまま男の拳へとかじりついた。
男は声にならない悲鳴を上げて、その場に崩れ落ちる。

「うっ・・・くそっ・・・化け物め・・・」

男の声を気にもせず、少女はゆっくりと咀嚼を続けている。

「固くて変な味なのだー。あはは。」

小指と薬指だけが残った右手に笑みを浮かべたまま、少女は口の中を空にしないで言った。
骨が砕ける音を聞き、男は一層顔をひきつらせた。
綺麗に並んだ少女の歯は余すところなく赤に染まっており、口から溢れた血がほほにこびりついている。
もう一度少女が男の右手にかじりつくと、それはもはや手には見えない形になってしまった。
千切れた部分からはとめどなく血が流れ、男の顔色も娘のそれに近くなっていく。
先ほどよりも速いペースで口の中のものを飲み込むと、少女は男を引きよせ右手から右腕へと対象を移した。

「ユ・・・ユキ・・・、リン・・・」

いよいよ朦朧としてきた意識の中で、男は二度と起き上がることのない娘と、家に残してきた息子の名を口にした。
家を出るときに息子の頭をなでた右手は既に無く、娘と手をつないだときの温もりも既に暗い夜の闇によって奪い去られてしまった。
もはや痛みを感じることもなく、考えることをやめた男にできることは全てを投げ出して瞼を閉じることしか残っていない。
日が沈みきった森の中で男が最後に見たものは、すでに動かぬ娘の陰で青白く光る茸だった。

幻想郷入りSS番外編!Part4(?)

論文の調べ物やっててマジで忘れるところだったwwwww
まぁ読む人なんていねーよwwwww



ってことで咲夜SS久々に続き投下!
あらすじとかないのでさっと今までの咲夜SS読んでくると吉かも!

時間の無駄だろボォケ

  o(#゚Д゚)_‐=o)`Д゚)・;'




それではかなり短いですが・・・どぞん・・・(;^ω^)












「・・・・・ごちそうさん。」
久々のまともな飯に驚くほど箸が進んだ。
最近はしてなかったものの、自然に手を合わせてしまったのもうなずける。


「お粗末さまでした。」
一言残して咲夜が空になった食器を台所の方へ運んで行く。


(これならどこ行っても働けるだろうに・・・。人付き合いが下手なのか・・・?)
そんなどうでもいいことを思っているうちに、こちらに背を向けたまま咲夜が皿を洗いだす。


「いやぁ~・・・美味かった。これなら吸血鬼のお嬢様もご満足だな。」
腹も膨れ、余裕ができた俺は背を反らしながら皿を洗う咲夜の後姿を眺めていた。


「そうね。普段はこういう食事で満足してくれるんだけれど。」


「やっぱたまには一味違ったモンが食いたくなるわけか。
  いや、飲みたくなるって言った方が正しいのかも知れねーけどさ。」


「最近はあまり無いわね・・・。たまに食事に混ぜているからかしら?」
さらりと言った一言だったが、彼女の手作りの料理を食べた後だと聞き過ごせない。


「さっきの料理は美味かったぜ。
  あんたの血をかけると美味くなる、とかあんのか?」


「今回は入れてないわ。
  そもそも貴方に飲ませるほど安くないわよ。」


「それでも金がないってことは誰も飲みたがらないんだな。
  お前さんのとこのお嬢様ってのはちゃんと払ってくれないのか?」

ヒュッ――――・・・ストン。


言い終わるや否やこちらに何か飛んできた。


「洗い物は済んだわ。この家にお風呂はあるのかしら?」
蛇口にかかっていた布巾で手を拭きながら咲夜がこちらを振り返る。


「一応・・・共用の風呂が一階に・・・。」
さっき飛んできたものを確認したいところだが、咲夜の顔から目が離せない。


「わかったわ。それじゃお風呂に行ってくるわ。」
そう言って彼女は何も持たず玄関へ向かい、そのまま外へ出ていった。


ドアが閉まってようやく首が回るようになった。
さっきの彼女の目はいつもと変わらないようだったが・・・。


(少し言いすぎたか・・・?まぁいいか・・・。

  ・・・・・・俺も風呂の準備でもするかな。)
そう思って体を起こしたとき、さっき何かが飛んできたあたりに小さなへこみができてるのに気付いた。


(あいつ何を投げたんだ・・・? というか投げられたものが見当たらないんだが・・・)
いつもの散らかった部屋ならともかく、今は部屋の中が片付いているのだ。
何もない身の周りに違和感を覚えつつ、俺は自分の服を取りに立ち上がった。

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プロフィール

にこぇ

Author:にこぇ
御年:20(自称)

趣味
 音楽関連(聞くor弾くor叩く)
 ゲーム(音ゲー>ACT>STG)
 稀に読書(綾辻様ヽ(´ー`)ノマンセー)

性格
 天邪鬼(自称)
 口を開くと下ネタ95%(当者調べ)
 紳士の毛皮をかぶった紳士
 典型的なB型人間
 → 自己中心型思考
   (空気は読める子)
  → スイッチのON/OFFが激しい
 → 愛したもの・人は一生涯
 → だいぶ酷いレベルの収集癖
 → 熱しやすく冷めやすい
   (でも忘れない)


音楽関連
・好きなバンド:BUMP OF CHICKEN

・好きなジャンル:HR/HM・ダンスミュージック・ボカロ等
 → HR/HMは有名どころを少し聞いた程度
 → ダンスミュージックはKONMAIのせい。
 → 偏食がひどい。特にボカロ。

・ニコ動の好きな歌い手様
 → Geroりん>Vin様>鳥子s、灯油s等・・・
イケボ・マジ・イオナズン

その他
 →ギター保持。経験年数なんて飾りです。偉い人にはそr(ry


ゲーム関連
・音ゲー関連
 メイン:IIDX
 他は弐寺ができない時にやる。
  → 御熱なこともしばしば。
 → 1P side 九段(適正少し)
 →好きなアーティスト
  →Ryu☆>Tatsh>LED,Yoshitaka>Other

・その他好きなゲーム

東方(~星蓮船)
 → 紅魔館メンバー大好き
  → 更に言うと咲夜さん。
   → 更に言うといぬさくや
 → 天則プレイ経験有り
  → 永遠のNランクおぜう
  → サブキャラ少々
 → 元Hardシューター(笑)
  → 星蓮船のみExまで
 → 文花帖フルコン済み
 → DS放置中。
 → 天則放置中。
  → まとめると東方放置中。

他STGとしてCaveを好む。
 → CS大往生保持。
 → 弐週目なんてなかった。
 → そもそもノーコン無理ゲー

Devil May Cryシリーズ
 → 2なんてなかった
 → やりこみ度:3>1>4
  → SEのしすぎで無印は気分が悪くなる
  → 両キャラDMDクリア。
  → Dante:Normal All mission SS Clear


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