十段最底辺が騒音をまき散らしながら一人暮らしを頑張るブログ

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咲夜さんSS

書きかけのとこまで。


明日は今と変わらない明日なのだろうか。

一瞬後に続くこの世界は今と変わらない一瞬なのだろうか。

目を閉じる前と目を開けた後の世界は繋がっているのだろうか。


目をつむる一瞬。
耳をふさぐ一瞬。
伸ばす手が空を切る一瞬。

その無と呼ぶべき何も存在しない一瞬。

はたしてそこに意味はあるのだろうか。

退屈としか感じない繰り返す日々を、それゆえに想うことはできるのだろうか。






「だぁー!終わった!」
今の仕事に一区切りつけ、ようやく背を伸ばすだけの余裕ができた。
首を回すだけで部屋の全部が見渡せるような四畳半。
その小さな世界の中でただ一人の住人が首を回している。


「あとは・・・メール出して・・・終了!お疲れ俺!」
解放感からか、徹夜明けのテンションかいつもより大きくなる声を抑えることなく口に出す。
ここ3日ほど寝る時間を削りに削っての作業だ。
もはや普通の精神状態じゃないのは明らかである。


「さぁーて・・・それじゃ好きなだけ寝るかなぁ・・・」
まだ伸ばし足りないのか、ぐぅーっと腕を伸ばしながら立ちあがる。
そこでようやく腹に何も入っていないことに気がついた。


「そういや・・・最後に食ったのって昨日の昼だっけ・・・」
昼といってもずいぶん日が傾いていたし、食べたといってもカップ麺一つだ。
外を見るとそろそろ日が沈みそうなオレンジの空をぽつぽつと人が歩いている。


「部屋には何もないし・・・ちょっとまとめて買ってくるか・・・。」
作業明けに動くことすら面倒だったのだが、腹の減り具合からそんなことなど言ってられない。
迷うことなく部屋のカギと財布とケータイを手に取り、着の身着のまま部屋を出た。


季節はいよいよ冬真っ盛り。
暖房にお世話になる日も増えてくるこの季節。
つい『あったかい』の文字につられて消えていく120円を自重しつつ最寄りのコンビニへ歩く。


「いらっしゃいませ~♪」
お決まりの入店音とそれに負けずとも聞きなれた店員の第一声が出迎える。
恐らくここまで仕事の範疇なのだろう。言い忘れたら減給とかな。


店内を掃除している店員を避けるようにカップ麺やパンを手のカゴに運ぶ。
ここまで腹が減っているとつい目に入るものを全部取ってしまうので商品を取る手が忙しい。
カゴが8割方埋まったところでレジへと足を向ける。


「お買い上げありがとうございます~158円~♪・・・」
手慣れた様子でカゴの中身を準備したレジ袋に移していく。
それを待っている間に眠気が出番と勘違いしたのかあくびが口に出る。


「以上で・・・円です~♪」
レジ袋が二つ目を越えたあたりでやっとカゴの中が空になった。
財布から数枚千円札を出し、おつりを受け取って店を出る。


「さて・・・少し腹に入れたら寝るかなぁ・・・。」
あくびを噛み殺しつつ、部屋に戻った途端に寝てしまう予想を立てて来た道を戻る。


そして部屋のドアまで戻り、手に持ったレジ袋を置いて鍵を取り出しドアを開けたとき、その予想が見事に覆された。


「あれ・・・?」
いつもと変わらない見慣れてもはや愛着すらわく小汚い部屋の中に人が一人。
家を出る前には誰もいなかったし、鍵を閉めて今あけたのだから誰か入れるわけがない。
もちろんこんな寒い中窓を開けるなんてこともしていない。


「こんにちは。ちょっとお邪魔してるわ。」
さらに困ったことに見たことも聞いたこともない声と格好をしている。
そもそもこの格好を外で見たことがあるのなら記憶の片隅にでも残っていそうなものだが。


「えーっと・・・どちら様で?」
とりあえず家主としてここは聞いておかねばなるまい。
部屋の外で鍵を開けた状態のまま口だけを動かして聞いてみる。


「ごめんなさい。私も来たばっかりなの。」
まともに質問に答えてもらえてない気もするが・・・とりあえず日本語だ。
顔は日本人らしいのだがいかんせんその格好で違和感が残ってしまう。


「来たばっかりって・・・どちらから?」
とりあえず話を聞いてみる。
一歩間違えれば空き巣確定なこの状況でのんきに質問している場合ではないだろうが。


「ここじゃない世界のスキマからよ。
  まったく・・・どこに飛ぶかわからないからって誰かの家に飛ばすことは無いじゃない。」
まさかの電波発言。
喋り方ははっきりしているし、その格好以外はまともそうなのだが。


「こっちじゃない世界ですか・・・。
  それで・・・なぜか俺の家に出てきた・・・と?」
とりあえずそういうことだと納得しておこう。
怒らせると何をしでかすかわからないのが電波だ。触れぬオタクの自己満足。


「そういうことね・・・ごめんなさい。完全なとばっちりで。」
口調から向こうもうんざりしているのだろう。
そして言い終わると、腰に手を当て部屋の真ん中にあるちゃぶ台兼仕事机に腰を下ろした。


「まぁ・・・見られて恥ずかしいだけの部屋なんで特に迷惑は無いんだけど・・・。
  えっと・・・お嬢さん・・・名前は?」
向こうが動いてくれたのでようやくこちらも部屋に入ることができた。
はいていたサンダルを脱ぎながら部屋に上がる。


「十六夜咲夜。すぐにいなくなるかもしれないから覚えてもらわなくても結構よ。」






「十六夜・・・咲夜・・・か。んでこっちの世界には何しに来たんだ?」
とりあえず彼女の話に合わせよう。
例え宇宙人が出てきても何事もないように・・・


「お嬢様にお使いを頼まれたの。ぬいぐるみを買ってきてほしいってね。」


「オジョウサマ・・・えっと・・・それは・・・」


「向こうの世界で私が仕えてる吸血鬼よ。
  なんでも妹と喧嘩してその仲直りに珍しい人形でも持ってきてほしいらしいわ。」


「ヘーキュウケツキデスカ。スゴイデスネ。」
吸血鬼と来たか。しかも妹までいるとは。
人形ってのは彼女の女の子らしさのアピールなのか?


「遠くを見るような眼しないでちょうだい。嘘は言ってないわ。」
そう言って真面目な眼差しでこちらを向いた。
睨みつけるほどではないが流石に穏やかではない。


「了解しました。
  向こうの世界から吸血鬼のお嬢様に命じられてこちらに来たんですね。」
話の流れから彼女の職業は従者なのだろう。
暗殺とかその辺が得意そうなスキルとかもってそうな・・・。


「わかっていただけて嬉しいわ。それじゃ少しお世話になるわね。」
そういって笑顔を投げてくる。
営業スマイルとは思えないほど完成された表情に逆に背筋が凍る。


「世話になる・・・?人形を買うのにそんなに時間がかかるのか?」


「私が向こうの世界に帰るまで少し時間がかかるらしいのよ。
  結界が少し弱くならないと人一人を移動させるのは難しいらしいわ。
  それに、スキマができる場所も変わらないらしいからここをあまり離れたくないのよ。」


「なるほどな・・・」
ずいぶんと細かい設定だな・・・
そしてまとめると数日間タダ飯食わせろってことか。
家出して来たような年にも見えるが・・・まぁ仕事が終わったばかりだし泊めてやるか。


「んじゃ・・・俺は寝るから好きにしてくれ。部屋から出るときは鍵を閉めてな。
  ・・・っと。合いカギどこだったっけ・・・」
とりあえず一段落したところで体を休めよう・・・。
思い出せばここ何日か徹夜だったじゃないか・・・。


「合いカギ?何か目印とかないの?」
部屋の中を探す俺に彼女が尋ねる。


「一緒に探してくれるのか?
  たしか・・・犬のストラップつけてたな。」
鍵がありそうなところを漁って背を向けたまま答える。


「犬・・・ってことはこれかしら?」
鈴の音に顔を向けると、彼女の手に久しく見てなかった合いカギがあった。


「あぁそれだ。その辺に落ちてたのか?」
確かなんかの本に挟んでたような覚えがあるんだが・・・。


「あなたの反対側にあったわよ?こっちにある本の間にね。」
彼女の示した方向には脱ぎ捨てた服がそのまま放り出されて出来た山があった。
そういえばその下には読んだばかりの小説が置いてあったような気もするけど・・・。


「そっちだったか・・・。見つけてくれてアリガトな。
  それじゃそのカギはえーっと・・・咲夜が持っててくれ。」


「わかったわ。それじゃおやすみなさい。
  寝るのはこのあたり?他に部屋は無いみたいだけれど。」
適当に畳んだ布団の方を向いた後、彼女が腰を上げ、そのままドアの方へ向っていく。


「あぁ。他に布団がないんだが大丈夫か?」
すれ違うように布団の方に移動した俺は布団を敷くだけの場所を確保するために散らかった部屋の片付けに移る。


「大丈夫よ。問題ないわ。」
そう言って彼女はドアを開け、外へ出ていった。


「ふぅ・・・いったい何なんだろうな・・・。」
口には出すものの頭は疑問よりも眠気でもはや停止寸前の状態。
とりあえず寝てから考えよう・・・。


外から鍵の閉まる音が鳴る前に俺は3日ぶりの眠りに落ちた。






「んぁ・・・・・・」
目をつぶっててもわかる眩しさでやっと目が覚めた。
寝る前は日が沈む前だったので半日以上寝ていたのだろう。


「ぁ~・・・・・・。・・・あ?」
目を開けて体を起したところで異変に気付く。


(あれ・・・ここ俺の部屋か?)
目をこすりながらだいぶ綺麗になっている部屋を見回してみる。
脱ぎ捨てた服も畳まれ、放り出したままだった本もきちんと壁に整理してある。


「あら。やっとお目覚め?」
後ろから声が聞こえたのでその方を向くと昨日と変わらない様子の咲夜がいた。


「部屋・・・掃除した? だいぶ綺麗になってる・・・けど・・・」
目が覚めたばかりでまだ頭が回らないまま咲夜にこの現状を聞いてみる。


「とりあえず床が見えるぐらいにはね。
  一応ここに置いてもらうのだから出来ることぐらいはしないと悪いわ。」
そういって彼女は立ちあがると冷蔵庫の方に向かう。


「何か食べる?最近何も食べてなかったんでしょう?」
そう言って冷蔵庫を開けて中を見る。


「あれ・・・冷蔵庫の中空っぽじゃなかったっけ・・・?」
ようやく頭の中がすっきりしてきたようだ。


「さっき外に出たついでに買ってきたわ。
  お金を持ってなかったから少し頂いたけれど。」
そう言われてテーブルの上にある財布に気付く。
たしか帰ってきてそのまま財布やらケータイやらをここに置いたまま寝てしまったな。


「まぁ飯作ってくれるのはありがたいけど・・・
  流石に勝手に財布持ってって物買われるのはあまり嬉しくないぜ。」
ケータイを開いて時間を見ると昼を少し過ぎた頃らしい。
ついでに財布の中身も見てみるが千円札が一枚なくなっているぐらいだった。


「向こうでもお嬢様たちの食事は私が作っていたから味の方は大丈夫よ。
  こんなお湯だけでできるモノよりは体にいいわ。」
そう言って冷蔵庫から野菜を取り出して台所の方へ持っていく。
既にご飯は炊けているらしく、炊飯器に保温のランプがついている。


「おいおい・・・お嬢様って吸血鬼なんだろう?
  人間の血の料理なんか出されたって困るぜ?」
することがないので少しすっきりして寂しくなった部屋をうろついてみる。
ついでに寝ていた布団も押し入れに戻して置いた。


「そんなもの出さないわよ。吸血鬼だからって毎日人間を襲うわけじゃないわ。
  昼間は寝ているけれどね。」
てきぱきと野菜を洗って切る工程に入っている咲夜。
俺は暇になってしまい、適当に本を引っ張り出して目をそちらに移しながら会話を続ける。


「流石に太陽の光は克服できてないのか。
  そいつは安心できるな。」


「あら。日傘さえあれば外には出れるわ。
  妹様は元気すぎて日傘の外に出てしまうから出れないけれど。」


「へぇ・・・そんな元気な吸血鬼の妹様に殺されたりはしないのか?」


「最近まで屋敷の外どころか部屋の外にすら出れなかったのよ。
  確かに好き勝手されたら私でさえ命の保証は無いわね。」


「それじゃ他の住人は大丈夫なのか?」


「他には魔女と妖精のメイドしかいないわ。人間は私一人よ。」


「そんな状況じゃなおさら不安じゃないか。非常食か?」


「悪いけどそんなに険悪な関係じゃないわ。向こうには向こうのルールがあるわ。」


「そんなもの守る吸血鬼なんてどこの国のおとぎ話にも載ってないぜ?」


「それはそのはずだわ。人外の上に人が立つなんておとぎ話にならないじゃない。」


「ってことは案外屋敷のトップはお前さんなのかい?」


「残念だけど私の能力じゃお嬢様には敵わないわ。せいぜい足止めが精一杯ね。」


「能力ねぇ・・・なんか持ってるのかい?」


「そんな面白がるものでもないわ。時間を少しいじれるだけよ。」


「そいつは便利だな。まさに足止め用の能力ってやつだ。」


「あら。他にもあるわ。気づかれずにナイフを投げるぐらいは出来るのよ?」


「それじゃ足止めにならないぜ。」


「時間を止めるだけで止まってくれるようなら仕えたりしないわ。」


「なんだそれ・・・どういう設定だよ・・・。」


「あら。信じてくれてないの?」


「まぁ家出の一言で済まされるよりは楽しいさ。
  それでスキマとやらはどんな形なんだ?タクシーか?リムジンか?」


「あらあら・・・ずいぶん勘違いされてるようね・・・。
  嘘は言ってないってちゃんと言ったじゃない。」


「残念だけどそんな設定を一言聞いて信じてくれるのはやっぱりお話の中だけだぜ。」


「それじゃこれで信じてくれるかしら?」
そういって台所にあったコップに冷蔵庫の中の麦茶を入れる。
そしてそれを空中に放り投げてフライパンの中身を皿に移し始めた。


「お前何して・・・・・・あれ?」
口から驚きの声が出ると同時に俺の前に野菜炒めとご飯とみそ汁、それにさっき放り投げたコップと麦茶が置いてあった。


「安心して。一滴もこぼしてないわ。
  味噌汁なんて久しぶりに作ったわ。お嬢様の口には合わないのよね。」
そう言ってフライパンを洗っている彼女の後姿を見ながらさっきの一瞬を振り返ってみる。


(ビデオを早送りしたような・・・さっきまで何もなかったはずだ・・・
  それに・・・放り投げた麦茶を全部元に戻すのだって・・・)


「どうしたの?冷めるわよ。」
口の端に笑いが見える咲夜から目を反らし、目の前の料理に手をつける。


どれも文句のつけようが無いほど美味かった。





「・・・・・ごちそうさん。」
久々のまともな飯に驚くほど箸が進んだ。
最近はしてなかったものの、自然に手を合わせてしまったのもうなずける。


「お粗末さまでした。」
一言残して咲夜が空になった食器を台所の方へ運んで行く。


(これならどこ行っても働けるだろうに・・・。人付き合いが下手なのか・・・?)
そんなどうでもいいことを思っているうちに、こちらに背を向けたまま咲夜が皿を洗いだす。


「いやぁ~・・・美味かった。これなら吸血鬼のお嬢様もご満足だな。」
腹も膨れ、余裕ができた俺は背を反らしながら皿を洗う咲夜の後姿を眺めていた。


「そうね。普段はこういう食事で満足してくれるんだけれど。」


「やっぱたまには一味違ったモンが食いたくなるわけか。
  いや、飲みたくなるって言った方が正しいのかも知れねーけどさ。」


「最近はあまり無いわね・・・。たまに食事に混ぜているからかしら?」
さらりと言った一言だったが、彼女の手作りの料理を食べた後だと聞き過ごせない。


「さっきの料理は美味かったぜ。
  あんたの血をかけると美味くなる、とかあんのか?」


「今回は入れてないわ。
  そもそも貴方に飲ませるほど安くないわよ。」


「それでも金がないってことは誰も飲みたがらないんだな。
  お前さんのとこのお嬢様ってのはちゃんと払ってくれないのか?」

ヒュッ――――・・・ストン。


言い終わるや否やこちらに何か飛んできた。


「洗い物は済んだわ。この家にお風呂はあるのかしら?」
蛇口にかかっていた布巾で手を拭きながら咲夜がこちらを振り返る。


「一応・・・共用の風呂が一階に・・・。」
さっき飛んできたものを確認したいところだが、咲夜の顔から目が離せない。


「わかったわ。それじゃお風呂に行ってくるわ。」
そう言って彼女は何も持たず玄関へ向かい、そのまま外へ出ていった。


ドアが閉まってようやく首が回るようになった。
さっきの彼女の目はいつもと変わらないようだったが・・・。


(少し言いすぎたか・・・?まぁいいか・・・。

  ・・・・・・俺も風呂の準備でもするかな。)
そう思って体を起こしたとき、さっき何かが飛んできたあたりに小さなへこみができてるのに気付いた。


(あいつ何を投げたんだ・・・? というか投げられたものが見当たらないんだが・・・)
いつもの散らかった部屋ならともかく、今は部屋の中が片付いているのだ。
何もない身の周りに違和感を覚えつつ、俺は自分の服を取りに立ち上がった。





「ふぅ・・・・・・ただいま、っと。」
風呂から戻った咲夜と入れ違いで部屋を出た俺は、そのまま真っすぐに風呂へ向いまっすぐ帰ってきた。
俺がいない間に彼女が何かするとすれば既に機会はあったろうから心配はしていないが、流石に彼女一人を部屋に置いておくわけにもいかないだろう。
来客が来たりでもすれば説明が面倒だ。


「おかえり。」
夕飯前と変わって、急に口数が減ったような気がした。


「・・・こっちの世界の湯加減はどうだった?」
どうにか彼女と会話ができないかと、思いついたことをそのまま口に出してみる。


「特に変わらないわ。・・・何を期待してたのかしら。」
ぴしゃりと言い切られ、自分の家なのに居場所が無くなったような心境になる。


(結構根に持つなこいつ・・・。そんなに気に障ったか・・・。)
そんなことを思いながら、脱いだ服を洗濯かごの前まで持って来たときかごが空なのに気付いた。


「あ・・・俺の服、洗濯してくれたのか?」
いまだそっぽを向いている咲夜の方へ顔を向けて聞いてみる。


「洗って干しただけよ。それで十分でしょう?」
そういいながら彼女は手に持っていた本に目を戻した。
その本は俺の部屋のものだったが、恐らく掃除した時にでも見つけたのだろう。


「洗って干した・・・?乾燥機が下にあったはずだぜ?」
この寒い中手洗いでもしたのだろうか?


「あなたの服なんてそれで十分でしょう?数だって少なかったじゃない。」


「まぁやってくれる分には嬉しいんだが・・・。それにしたってその言い方は無いぜ。」


「そうね。今度からは言葉を選ぶことにするわ。」
そう言うと、彼女は読んでいた本を元の場所に戻してテーブルの上にあった新聞に手を伸ばした。


(全く良い意味に聞こえないぜ・・・。)
そう思いながら俺はパソコンの電源を点けた。


画面の方を向きなら視界の端にいる咲夜を見る。
なにやら新聞を眺めては指でなぞりながら何かを呟いている。


何をしているのか考えているうちにパソコンの起動が終了したようだ。
見慣れたデスクトップ上にメールソフトを立ち上げ、返信が来ていないか確認する。


(メール読み込み・・・お、新着一件・・・確認のメールか?)
スパムはすでに迷惑メールに登録済みなため、このアドレスに来るのはほとんど会社とのメールしか来ない。
まれに登録されていないスパムが来ることもあるが・・・。


(読み込み完了・・・あれ?もう一件未読のメールが・・・。)
会社からのメールは件名から見て、恐らく送信した企画書のメールだろう。
修正を何度か行い、今回で完成との話だったはずだ・・・。


(おかしいな・・・さっき新着メールは一件だったはずだけど・・・)
件名どころか送信元アドレスすら書かれていないそのメール。
会社から来たメールの本文を目で追いながら意識はもう一通のメールに奪われたままである。


(ふぅ・・・確認もらえたし、これで後は向こうに任せるだけ・・・か・・・。)
会社からのメールの内容を読んで今一度、一仕事終えた気分が押し寄せてくる。
毎回ここまで来るのにいくつも山を越えて来るので、こればかりは何度経験しても嬉しいものがある。


さらに、締め切り直前はプライベートどころか寝る時間さえ無いスケジュールになるため、そのあとは数日間まとまった休みができるのだ。
今回も五日ほど羽を伸ばす時間がもらえた。


(・・・・・・さて・・・。)
背を反らしながら、改めてもう一通のメールに目を向ける。
表示されているのは件名とメールアドレスだけだがそのどちらも空欄である。


(メルアド無しでメールって届くもんなのか? そもそもこんなことどうやってやるんだ?)
新手のスパムという可能性もあるが、そもそもこんな手の込んでそうなことはしてこないだろう。


(・・・・・・まぁ開けていきなり何か飛び出してくるわけでもないだろうからな・・・)
そんなことを思いながらそのメールをクリックして開いてみる。


(何が書いてあんのかな・・・・・・って・・・あれ?)
内容が表示されるウィンドウには何も表示されていない。
件名とアドレスに続いてまで本文まで空ってか・・・?


(なんだこれ・・・・・・悪戯とかか・・・?)
ちょっとした期待を裏切られたような気がしてそのままメールソフトを閉じようとしたとき、本文のウィンドウの横にスクロールバーが現れた。


(・・・・・・さっきまであったか?)
今度こそ何か書いてあるだろうとイラつきながら、スクロールバーを下へ引っ張る。


(・・・・・・だいぶ長いな・・・おっ、やっと文字が見えた・・・)
本文の七割目あたりまでスクロールしてようやく空白の中に黒いものが見えてマウスから手を離した。


そこには短い文が一行。


(・・・・・・『彼女をお願いね』・・・?)
これだけ何かありそうな雰囲気を出しておいてそれだけかよ・・・しかも意味わかんねーし・・・。


ため息交じりにメールソフトを閉じてこのあと何をしようか考えているうちに視界の端に咲夜が映った。


(『彼女をお願いね』って・・・こいつのことか?)
確かにそう考えれば納得いくが・・・だとしたらこいつは最初から俺の部屋に来るつもりだったってことか?



およそ8割ほどまで新聞を読み終えた咲夜は変わらず指で新聞をなぞっている。


(ったく・・・ようやく休みだってのにこれじゃ気が休まらないぜ・・・)
そんなことを思いながら、結局俺はパソコンを閉じて数日ぶりのゲームに励むことにした。


(腕落ちてなきゃいいけどなぁ・・・)
久々にテレビの電源を入れ、ゲーム機を取りだそうとしたとき、咲夜が口を開いた。


「ねぇ、にこぇさん・・・だったかしら?ちょっといい?」
急に名前を呼ばれて一瞬体が固まる。


「ど・・・どうかしたのか?改まって・・・」
とりあえずゲーム機をそのまま元に戻して彼女の方に向き直る。


「あなた、この近くで働き口があるところを知らないかしら?
  出来れば数日間だけで済むようなのが良いんだけれど。」


「働き口・・・バイトか。ん~・・・あったっけなぁ・・・」


「ここから歩ける範囲が良いわ。」


「歩ける範囲・・・そーいや近くのコンビニがバイト募集してたような・・・」


「コンビニ・・・ここから真っすぐ歩いたところの店かしら?」


「そうそう。あそこが夜間のバイトを募集してたはずだ。そんな張り紙が貼ってあったよ。」
こいつなら年齢制限も大丈夫だろう。
面接みたいなのがあるのなら問題無く入れるはずだ。


「夜間・・・今から行っても大丈夫かしら?」


「確かに時間的には今ぐらいだけど・・・どうして急に・・・?」


「ぬいぐるみを買うにはお金がいるわ。それに貴方に返さなきゃいけない分もあるわけだし。」


(あぁ・・・あんまりあてにはしてなかったけど返す気はあるんだな・・・。)
そんなことを思いながら彼女の話にうなずいた。


「それじゃちょっと聞いてくるわ。」
そういって彼女は新聞を元の場所へ戻して玄関の方へ歩いて行った。


「暗いから気をつけてな。それじゃいってらっしゃい。」
彼女の言葉を聞き終え、俺は再度ゲーム機に手を伸ばした。


「えぇ、行ってくるわね。」
そう言い終わるとドアが開き、外の風が入り込む前に閉まった。


(バイトか・・・ただの家出じゃねぇのかもな・・・・・・)
そんなことを思いながらテレビに向き直り、ゲーム機の電源を入れた。
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プロフィール

にこぇ

Author:にこぇ
御年:20(自称)

趣味
 音楽関連(聞くor弾くor叩く)
 ゲーム(音ゲー>ACT>STG)
 稀に読書(綾辻様ヽ(´ー`)ノマンセー)

性格
 天邪鬼(自称)
 口を開くと下ネタ95%(当者調べ)
 紳士の毛皮をかぶった紳士
 典型的なB型人間
 → 自己中心型思考
   (空気は読める子)
  → スイッチのON/OFFが激しい
 → 愛したもの・人は一生涯
 → だいぶ酷いレベルの収集癖
 → 熱しやすく冷めやすい
   (でも忘れない)


音楽関連
・好きなバンド:BUMP OF CHICKEN

・好きなジャンル:HR/HM・ダンスミュージック・ボカロ等
 → HR/HMは有名どころを少し聞いた程度
 → ダンスミュージックはKONMAIのせい。
 → 偏食がひどい。特にボカロ。

・ニコ動の好きな歌い手様
 → Geroりん>Vin様>鳥子s、灯油s等・・・
イケボ・マジ・イオナズン

その他
 →ギター保持。経験年数なんて飾りです。偉い人にはそr(ry


ゲーム関連
・音ゲー関連
 メイン:IIDX
 他は弐寺ができない時にやる。
  → 御熱なこともしばしば。
 → 1P side 九段(適正少し)
 →好きなアーティスト
  →Ryu☆>Tatsh>LED,Yoshitaka>Other

・その他好きなゲーム

東方(~星蓮船)
 → 紅魔館メンバー大好き
  → 更に言うと咲夜さん。
   → 更に言うといぬさくや
 → 天則プレイ経験有り
  → 永遠のNランクおぜう
  → サブキャラ少々
 → 元Hardシューター(笑)
  → 星蓮船のみExまで
 → 文花帖フルコン済み
 → DS放置中。
 → 天則放置中。
  → まとめると東方放置中。

他STGとしてCaveを好む。
 → CS大往生保持。
 → 弐週目なんてなかった。
 → そもそもノーコン無理ゲー

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